Work Life Fun

仕事も人生も楽しむ社労士

災害など臨時の場合の時間外労働等の許可基準の改正に関する解説

※当サイトはリンクに広告ページが含まれている場合があります

2019年4月1日より時間外労働の上限規制が始まっていますが、災害など臨時の必要がある場合に関しては、事前の許可または事後の届出により時間外労働や休日労働が認められており、その許可基準が改正されています。

臨時の時間外労働・休日労働が認められる根拠条文

災害など臨時の必要がある場合に、労働基準監督署による事前の許可または事後の届出により時間外労働や休日労働が認められます。その根拠となるのが労働基準法33条です。

会社の就業規則にもこの規定は必ず入っているはずです。

労働基準法33条(災害等による臨時の必要がある場合の時間外労働等)
  1. 災害その他避けることのできない事由によって、臨時の必要がある場合においては、使用者は、行政官庁の許可を受けて、その必要の限度において労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。ただし、事態急迫のために行政官庁の許可を受ける暇がない場合においては、事後に遅滞なく届け出なければならない。
  2. 前項ただし書の規定による届出があった場合において、行政官庁がその労働時間の延長又は休日の労働を不適当と認めるときは、その後にその時間に相当する休憩又は休日を与えるべきことを、命ずることができる。

では、どのような場合に許可されるのか? その基準が不明瞭であれば実務上会社は困りますよね。

まず、この許可基準は昭和22年・昭和26年の行政通達に示されています。

そして、今回「現代的な事象等を踏まえて解釈の明確化を図る」という趣旨により「災害等による臨時の必要がある場合の時間外労働等に係る許可基準の一部改正」が行われています(基発0607第1号・基監発0607第1号)。

なお、従来の許可基準で示されている基本的な考え方に変更はないとされています。

災害その他避けることのできない事由と臨時の考え方

法律の条文は「災害その他避けることのできない事由によって、臨時の必要がある場合」となっています。

「災害、緊急、不可抗力その他客観的に避けることのできない場合の規定であるからその臨時の必要の限度において厳格に運用すべきもの」とされており、許可又は事後の承認は、概ね次の基準によって取り扱うとされています。

  1. 単なる業務の繁忙その他これに準ずる経営上の必要は認めないこと
  2. 地震、津波、風水害、雪害、爆発、火災等の災害への対応(差し迫った恐れがある場合における事前の対応を含む。)、急病への対応その他の人命又は公益を保護するための必要は認めること。例えば、災害その他避けることのできない事由により被害を受けた電気、ガス、水道等のライフライン(電話回線やインターネット回線等の通信手段も含む)や安全な道路交通の早期復旧のための対応、大規模なリコール対応は含まれること。
  3. 事業の運営を不可能ならしめるような突発的な機械・設備の故障の修理、保安やシステム障害の復旧は認めるが、通常予見される部分的な修理、定期的な保安は認めないこと。例えば、サーバーへの攻撃によるシステムダウンへの対応は含まれること。
  4. 上記2及び3の基準については、他の事業場からの協力要請に応じる場合においても、人命又は公益の確保のために協力要請に応じる場合や協力要請に応じないことで事業運営が不可能となる場合には、認めること。

こういった許可基準に関して、勝手に拡大解釈する人がいますが、

  • 単なる業務の繁忙その他これに準ずる経営上の必要は認めないこと
  • 通常予見される部分的な修理、定期的な保安は認めないこと

と念押しされている点は要注意です。

直接対応以外でも必要不可欠な付随業務は認められる

許可の対象として、災害など事由への直接対応に加えて「必要不可欠に付随する業務」を行う場合も含まれるとされており、以下が例示されています。

  • 事業場の総務部門において、当該事由に対応する労働者の利用に供するための食事や寝具の準備をする場合
  • 当該事由の対応のために必要な事業場の体制の構築に対応する場合

雪害の場合の具体例

雪害の場合の具体例として、道路交通の確保等人命又は公益を保護するために除雪作業を行う臨時の必要がある場合が該当し、以下が例示されています。

  • 安全で円滑な道路交通の確保ができないことにより通常の社会生活の停滞を招くおそれがあり、国や地方公共団体等からの要請やあらかじめ定められた条件を満たした場合に除雪を行うこととした契約等に基づき除雪作業を行う場合
  • 人命への危険がある場合に住宅等の除雪を行う場合のほか、降雪により交通等の社会生活への重大な影響が予測される状況において、予防的に対応する場合も含まれる

許可基準は限定列挙でなく例示

許可基準により示されている事項は、限定列挙ではなくあくまでも例示ということです。

そのため、今回示された具体例以外でも「災害その他避けることのできない事由によって、臨時の必要がある場合」となることはあり得るとされています。

その例として、許可基準の4では「他の事業場からの協力要請に応じる場合」となっていますが、「他の事業場」と言った場合、言葉だけを見ると厳密には国や地方公共団体は含まれません。

しかし、災害発生時に国の依頼を受けて避難所避難者へ物資を緊急輸送するといったこともありえますし、これらの業務は対象となるとされています。

参考:災害等による臨時の必要がある場合の時間外労働等に係る許可基準の一部改正(基発0607第1号)

参考:災害等による臨時の必要がある場合の時間外労働等に係る許可基準の解釈に当たっての留意点(基監発0607第1号)

【無料】効率的に人事労務の情報を入手しませんか?
  • 毎年のように改正される労働法令への対応に頭を悩ませている
  • 総務や経理などの他の業務を兼務しているので、人事労務業務だけに時間を割けない

といった悩みを抱える企業の経営者・人事労務担当者向けに、公開型のブログでは書けない、本音を交えた人事労務に関する情報・ノウハウ、時期的なトピックに関するメールマガジンを「無料」で配信しています。

過去の配信分は公開しません。

情報が必要な方は、いますぐ以下のフォームから購読の登録をしてください。購読して不要と思ったら簡単に解除できますのでご安心ください。


up_line