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パワハラの定義については以下の記事で解説していますが、最も悩ましいのは業務指導とパワハラの線引きです。
今回は、パワハラか否かを判断する上で参考になる「6つの代表的な類型」と「パワハラに該当する例・該当しない例」を紹介します。
1. 身体的な攻撃(暴行、傷害)
身体的な攻撃はわかりやすいでしょう。パワハラというよりもはや犯罪ですし・・・。
「昭和の時代ならともかく、今の時代に身体的な攻撃をするような人がいるのか?」
と疑問を持つかもしれませんが、今でも聞くことがあります。。。警察沙汰になった事例の相談を受けたこともありますし。。。
なお、厚生労働省の有識者会議による報告書では、以下のパワハラの事例が示されています。
- 足で蹴られる(女性、50歳以上)
- 胸ぐらを掴む、髪を引っ張る、火の着いたタバコを投げる(男性、40歳代)
2. 精神的な攻撃
精神的な攻撃とは、
- 脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言
のことであり、パワハラに該当すると考えられる例は以下のとおり。
- 人格を否定するような言動を行う(相手の性的指向・性自認に関する侮辱的な言動を含む)
- 業務の遂行に関する必要以上に長時間にわたる厳しい叱責を繰り返し行う
- 他の労働者の面前における大声での威圧的な叱責を繰り返し行う
- 相手の能力を否定し、罵倒するような内容の電子メール等を当該相手を含む複数の労働者宛てに送信する
そして、パワハラに該当しないと考えられる例は以下のとおり。
- 遅刻など社会的ルールを欠いた言動が見られ、再三注意してもそれが改善されない労働者に対して一定程度強く注意をする
- その企業の業務の内容や性質等に照らして重大な問題行動を行った労働者に対して、一定程度強く注意をする
なお、厚生労働省の有識者会議による報告書では、以下のパワハラの事例が示されています。
- みんなの前で、大声で叱責。物をなげつけられる。ミスをみんなの前で、大声で言われる(女性、30歳代)
- 人格を否定されるようなことを言われる。お前が辞めれば、改善効果が300万出るなど会議上で言われた(男性、20歳代)
3. 人間関係からの切り離し
人間関係からの切り離しとは、
- 隔離・仲間外し・無視
のことであり、パワハラに該当すると考えられる例は以下のとおり。
- 自身の意に沿わない労働者に対して、仕事を外し、長期間にわたり、別室に隔離したり、自宅研修させたりする
- 一人の労働者に対して同僚が集団で無視をし、職場で孤立させる
そして、パワハラに該当しないと考えられる例は以下のとおり。
- 新規に採用した労働者を育成するために短期間集中的に別室で研修等の教育を実施する
- 懲戒規定に基づき処分を受けた労働者に対し、通常の業務に復帰させるために、その前に、一時的に別室で必要な研修を受けさせる
なお、厚生労働省の有識者会議による報告書では、以下のパワハラの事例が示されています。
- 挨拶をしても無視され、会話をしてくれなくなった(女性、30歳代)
- 他の人に「私の手伝いをするな」と言われた(男性、50歳以上)
4. 過大な要求
過大な要求とは、
- 業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制・仕事の妨害
のことであり、パワハラに該当すると考えられる例は以下のとおり。
- 長期間にわたる、肉体的苦痛を伴う過酷な環境下での勤務に直接関係のない作業を命ずる
- 新卒採用者に対し、必要な教育を行わないまま到底対応できないレベルの業績目標を課し、達成できなかったことに対し厳しく叱責する
- 労働者に業務とは関係のない私的な雑用の処理を強制的に行わせる
そして、パワハラに該当しないと考えられる例は以下のとおり。
- 労働者を育成するために現状よりも少し高いレベルの業務を任せる
- 業務の繁忙期に、業務上の必要性から、当該業務の担当者に通常時よりも一定程度多い業務の処理を任せる
なお、厚生労働省の有識者会議による報告書では、以下のパワハラの事例が示されています。
- 終業間際に過大な仕事を毎回押し付ける(女性、40歳代)
- 休日出勤しても終わらない業務の強要(男性、30歳代)
5. 過小な要求
過小な要求とは、
- 業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと
であり、パワハラに該当すると考えられる例は以下のとおり。
- 管理職である労働者を退職させるため、誰でも遂行可能な業務を行わせる
- 気にいらない労働者に対して嫌がらせのために仕事を与えない
そして、パワハラに該当しないと考えられる例は以下のとおり。
- 労働者の能力に応じて、一定程度業務内容や業務量を軽減する
なお、厚生労働省の有識者会議による報告書では、以下のパワハラの事例が示されています。
- 従業員全員に聞こえるように程度の低い仕事を名指しで命じられた。(女性、20歳代)
- 営業なのに買い物、倉庫整理などを必要以上に強要される(男性、40歳代)
6. 個の侵害
個の侵害とは、
- 私的なことに過度に立ち入ること
であり、パワハラに該当すると考えられる例は以下のとおり。
- 労働者を職場外でも継続的に監視したり、私物の写真撮影をしたりする
- 労働者の性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報について、当該労働者の了解を得ずに他の労働者に暴露する
そして、パワハラに該当しないと考えられる例は以下のとおり。
- 労働者への配慮を目的として、労働者の家族の状況等についてヒアリングを行う
- 労働者の了解を得て、当該労働者の機微な個人情報について、必要な範囲で人事労務部門の担当者に伝達し、配慮を促す
なお、厚生労働省の有識者会議による報告書では、以下のパワハラの事例が示されています。
- 交際相手の有無について聞かれ、過度に結婚を推奨された(女性、30歳代)
- 個人の宗教を、みんなの前で言われ、否定、悪口を言われた(女性、50歳以上)
まとめ
今回、指針を踏まえて、パワハラの6つの代表的な類型、パワハラに該当する例・該当しない例を紹介しましたが、これがすべてではありません。
指針においても、
- 個別の事案の状況等によって、判断が異なる場合もあり得ること
- 例は、限定列挙ではないことに十分留意すること
と記載されています。
実務上、業務指導とパワハラの線引きは悩ましいものです。ただ、従業からの相談があった場合は、会社としてきちんと調査することが重要です。
今やパワハラは大きな社会問題になっています。
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そして、以下の記事で紹介しているとおり、国が行った実態調査によると、
- 3人に1人がパワハラを受けた経験がある
と回答していますし、会社は相談窓口を設置していても気づきません。
労使の問題は社内で解決するのが基本ですが、それができていない会社が多く、社会問題になっているからこそ、規制が強まり、パワハラ防止措置が事業主の義務となったわけです。
パワハラ防止措置に違反した場合、都道府県労働局の助言、指導、勧告の対象となり、勧告に従わない場合は企業名公表もあり得るため要注意です。
- 毎年のように改正される労働法令への対応に頭を悩ませている
- 総務や経理などの他の業務を兼務しているので、人事労務業務だけに時間を割けない
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