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50年前に議論されていた同一労働同一賃金とは?

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同一労働同一賃金という言葉を最近よく聞くと思いませんか?

今回は、50年前に活発に議論されたにも関わらず、日本で定着しなかった同一労働同一賃金の歴史について解説します。

さも同一労働同一賃金を新しい考え方・制度と喧伝する「えせコンサルタント」に騙されないようにご注意ください。

同一労働同一賃金とは?

まず、同一労働同一賃金とは何なのかという点から説明します。

性別、雇用形態(フルタイム、パートタイム、派遣社員など)、人種、宗教、国籍などに関係なく、同一の職種に従事する労働者に対して同一の賃金水準を適用し、労働の量に応じて賃金を支払う賃金政策のこと。

国際労働機関(ILO)では、同原則をILO憲章の前文に挙げており、基本的人権の一つと考えている。

Wikipedia「同一労働同一賃金」より

簡単に言うと、同じ職務内容であれば、賃金も同じにすべしということです。

これは増え続ける非正規労働者、正社員と非正規労働者の賃金格差の問題から昨今議論になっているものです。

確かに、同じ仕事をしているのに、正社員やパートタイム労働者といった雇用形態だけで賃金格差が生じているというのはおかしいと言えます。

ただ、最近の論調を見ていると、以下のような発言を声高々に述べる人が多く、一抹の不安を感じます。

  • 今までの日本の年功序列による賃金システムは既に崩壊している
  • 海外のように同一労働同一賃金にすべき
  • 日本の人事システムは古くさい、世界のトレンドにあわせるべき

こんな風に言っているように聞こえるんです。キノセイカナ???

既に50年前に議論されていた同一労働同一賃金

日本の年功序列による賃金システムを古くさいというなら、むしろ同一労働同一賃金制こそ、もっと古くさいものと言えるでしょう。

なぜなら、歴史を遡ると、日本の政府・経済団体は、1960年代から高度成長期に至るまで、同一労働同一賃金制を推進しようとしていたわけです。

つまり、同一労働同一賃金制の議論というのは、新しいどころか50年前の議論を蒸し返しているだけであって、決して新しいわけではありません。

なぜ日本では同一労働同一賃金が定着しなかったのか?

では、なぜ日本の賃金システムが今の姿になっているのか、なぜ同一労働同一賃金制を選択しなかったのか? もし、改めて議論するのであれば、過去の歴史・社会情勢を踏まえて議論すべきです。

この点は、新しい労働社会―雇用システムの再構築への中で詳しく解説されており、人事労務の専門家なら必ず一読すべきものですが、簡単にいえば、

  • 企業の人事担当者が同一労働同一賃金による職務給ではなく、職能給を選択した

ということです。

大事なポイントなので繰り返しますが、政府や経済団体は、1960年代から高度成長期に至るまで、職務給、つまり同一労働同一賃金制を推進しようとしていたわけです。

しかし、実際に企業の中で人事を担当していた人事労務担当者が、その動きに反発し、職能給を選択したわけです。職能給でなければ企業は立ち行かないし人事もまわせないと考えたわけです。

人事システムと経済情勢

人事システムというのは、その時代の経済・社会情勢の影響を大きく受けます。

当時は、急激な技術革新に対応する必要があり、企業は大規模な配置転換を進めていました。急激な技術革新に対応できる人を見極めるときに、職務を定義し賃金を決めるような職務給ではダメだと判断したのです。

経営の合理化を進めるためには、むしろ能力によって評価する、つまり職能給の方が適していたと考えたわけです。

そして、仕事への意欲や態度といった主観的な要素を重視し評価していく「能力主義管理」によって、労働者は仕事に全力投球し、その後の日本の発展に寄与したのは、歴史が証明するとおりです。

さらに、歴史的にもっと遡ることになりますが、1920年代から広がった生活給という思想が、同一労働同一賃金の考え方と矛盾したという点も見逃せない事実です。

同一労働同一賃金と矛盾する生活給

生活給は、年齢が上昇し、家族を扶養するようになっていくにつれて、賃金が上昇していくという考え方です。これは、同一労働同一賃金という考え方と矛盾します。

同一労働同一賃金であれば、その労働者に家族がいるかどうかは全く関係ありません。

この生活給という考え方が日本で浸透したのは、公的システムの中に生活保障的な部分を含む欧米との違いのためと言われています。

まとめ

人事制度、中でも賃金制度の構築・見直しの際には、単に一時期の流行だけを見てはいけません。古くさく見えようとも、今のシステムが存在するには、相応の理由があるわけです。

賃金制度は、従業員の生活に直結します。新しい・古い、海外のトレンドといった薄ぺっらい議論ではなく、日本の人事労務管理の歴史の流れを知り、メリット・デメリットを比較できる専門家と相談しながら進めていくことをオススメします。

ただ、私自身は、同一労働同一賃金の流れは時代の必然だと思っています。今の非正規労働者の問題を考えると、賃金制度だけでなく、それに伴う人事制度の見直しも他に先んじて行うべきだと思っています。

最後になりますが「新しい労働社会―雇用システムの再構築へ」は本当にオススメです。

専門用語も多く、読み進めるにはかなりの気力と時間が必要ですが、むしろ今のような「働き方の見直し」が一種の流行・ビジネスチャンスのようになっている時代にこそ、改めて読み直すべき良書です。

歴史の中で変遷していった人事システム・雇用システムを学ぶことは、今へのヒントになります。この本を読んでいて、以下の言葉を何度も思い出しました。

愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ

この本を読んで、私も知識不足を反省し、まだまだ学ばなければならないと強く感じた次第です。歴史から学ぶことは多いです。

新しい労働社会―雇用システムの再構築へ
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