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労働保険(雇用保険・労災保険)の対象となる「賃金の範囲」についてたまに質問を受けます。
そのため、労働保険料の対象となる賃金の範囲をわかりやすく表にまとめました。
なお、労働保険とは、雇用保険と労災保険を総称した言葉ですが、対象となる労働者の範囲などは、以下の記事のとおり意外と違いがあります。
しかし、対象となる賃金の範囲は、今回解説するように共通しています。
労働保険の対象となる賃金
労働保険(労災保険及び雇用保険)の対象となる賃金とは以下のとおりです。
- 事業主がその事業に使用する労働者に対して賃金、手当、賞与、その他名称のいかんを問わず労働の対償として支払うすべてのもので、税金その他社会保険料を控除する前の支払総額
これが基本的な考え方であり定義です。そして、この基本的な考え方を踏まえて、厚生労働省は以下の具体的な解釈を示しています。
- 基本賃金
- 時間給・日給・月給、臨時・日雇労働者・パート・アルバイトに支払う賃金
- 賞与
- 夏期・年末などに支払うボーナス
- 通勤手当
- 非課税分を含む
- 定期券、回数券
- 通勤のために支給する現物給与
- 超過勤務手当、深夜手当等
- 通常の勤務時間以外の労働に対して支払う残業手当等
- 扶養手当、子供手当、家族手当
- 労働者本人以外の者について支払う手当
- 技能手当、特殊作業手当、教育手当
- 労働者個々の能力、資格等に対して支払う手当や、特殊な作業に就いた場合に支払う手当
- 調整手当
- 配置転換・初任給等の調整に支払う手当
- 地域手当
- 寒冷地手当・地方手当・単身赴任手当等
- 奨励手当
- 精勤手当・皆勤手当等
- 物価手当、生活補給金
- 家系補助の目的で支払う手当
- 休業手当
- 労働基準法第26条に基づき、事業主の責に帰すべき事由により支払う手当
- 宿直・日直手当
- 宿直・日直等の手当
- 雇用保険料、社会保険料等
- 労働者の負担分を事業主が負担する場合
- 昇給差額
- 離職後支払われた場合で在職中に支払いが確定したものを含む
- 前払い退職金
- 支給基準・支給額が明確な場合は原則として含む
- その他
- 不況対策による賃金からの控除分が労使協定に基づき遡って支払われる場合の給与
労働保険の対象とならない賃金
次に労働保険の対象とならない賃金は以下の表のとおりです。
- 役員報酬
- 取締役等に支払う報酬
- 結婚祝金、死亡弔慰金、災害見舞金、年功慰労金、勤続褒賞金、退職金
- 就業規則・労働協約等の定めがあるとないとを問わない
- 出張旅費、宿泊費
- 実費弁償と考えられるもの
- 工具手当、寝具手当
- 労働者が自己の負担で用意した用具に対して手当を支払う場合
- 休業補償費
- 労働基準法第76条の規定に基づくもの、法定額60%を上回った差額分を含めて賃金としない
- 傷病手当金
- 健康保険法第99条の規定に基づくもの
- 解雇予告手当
- 労働基準法第20条に基づいて労働者を解雇する際、解雇日の30日以前に予告をしないで解雇する際、解雇日の30日以前に予告をしないで解雇する場合に支払う手当
- 財産形成貯蓄等のため、事業主が負担する奨励金等
- 勤労者財産形成促進法に基づく勤労者の財産形成貯蓄を援助するために事業主が一定の率又は額の奨励金を支払う場合(持株奨励金など)
- 会社が全額負担する、生命保険の掛け金
- 従業員を被保険者として保険会社と生命保険等厚生保険の契約をし、事業主が保険金を全額負担するもの
- 持家奨励金
- 労働者が持家取得のため融資を受けている場合で事業主が一定の率又は額の利子補給金等を支払う場合
- 住宅の貸与を受ける利益(福利厚生施設として認められるもの)
- 住宅貸与されない者全員に対し(住宅)均衡手当を支給している場合は、賃金となる場合がある
まとめ
様々な手当に関する解釈が示されており、労働保険の歴史を感じてしまいます。
多くの会社にとって、どの賃金が労働保険の対象となるのか関心が高まるのは労働保険の年度更新の作業時でしょうし、賃金の中に様々な手当がある会社は、混乱してしまうかもしれません。
労働保険の年度更新については以下の記事でまとめていますので、併せてご参考ください。
そもそも手当の種類が膨大すぎる会社は、賃金制度の見直しが急務と言えます。
1つ1つの手当は過去に必要性が生じたことで設定されたのでしょうが、同一労働同一賃金、均衡・均等待遇が求められる昨今、本当にその手当が必要なのか慎重に吟味する必要があります。
- 毎年のように改正される労働法令への対応に頭を悩ませている
- 総務や経理などの他の業務を兼務しているので、人事労務業務だけに時間を割けない
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