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職務記述書・ジョブ・ディスクリプションの定義と記述項目

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同一労働同一賃金の話題になると必ず出てくる職務記述書・ジョブ・ディスクリプションの定義と記述項目について解説します。

まず、そもそもジョブ・ディスクリプション(Job Description)という言葉はご存知ですか? 日本語に訳すと職務記述書となりますが、日本企業でしか働いたことがない方にはあまり馴染みがない言葉かもしれません。

しかし、この職務記述書・ジョブ・ディスクリプションは、海外では当たり前に使用されるものです。

職務記述書とは?

まず、ジョブ・ディスクリプションの定義を確認しておくと、Wikipedia「職務記述書」では以下のように解説されています。

ジョブ・ディスクリプションは、職務内容を記載した雇用管理文書である。

労働者の職務を明確化することによって「働きの度合い」と「賃金」を繋げる役割がある。成果主義、成果給を導入する際には不可欠なものであり、企業の人事考課方針などに使用される。

英語では「job description(ジョブ・ディスクリプション)」といい、評価制度が一般的であるアメリカやヨーロッパでは、雇用管理の土台となる文書として広く用いられている。

責任と役割毎に用意され、1つの(「一人の」ではなく)ポストに1つの文書となるのが基本である。

ただし、マニュアル管理できるようなパターン職務の場合には、「働きの度合い」 と「賃金」の関係が安定しているので、1つの文書で同一職務担当者に適用することが可能である。

職務記述書(ジョブ・ディスクリプション)とは、職務内容を記載した文書であり、「職務」と「賃金」を明確に結びつけるためのものということです。

日本では労働条件通知書や雇用契約書に従事する業務内容を記入しますが、大抵の場合「企画・営業に関する業務」といった漠然とした書き方になっています。

しかし、ジョブ・ディスクリプションに記載された職務内容をもとに評価・賃金が決まる海外企業では、明確に書いておかなければ、実際に成果を評価したり賃金を決めたりする際に困ってしまうわけです。

職能給と職務給の違い

このように、厳密には、ジョブ・ディスクリプション = 職務記述書とはならないわけですが、ただ、これは別にどちらが良い・悪いというわけではなく、そもそも雇用の考え方の違いです。

海外ではジョブ(職務)に対して応募する、日本では会社に対して応募するという考え方の違いであり、「就職」と「就社」の違いとも言われています。

ジョブ(職務)に対して応募するためには、その職務内容を詳細に知らなければ応募できません。

その一方で、日本の場合、職務というより、その人の能力や役割といった視点で、会社が頻繁に配置転換や職務の変更を行います。

つまり、職務を詳細に記述することが難しく、そもそも職務を詳細に記述する必要がないと言えるわけです。

これが「職能給」と「職務給」という賃金形態の違いに結びつき、まとめると以下のようになります。

  • 職能給(日本):「人」に焦点を当てて給料が決める
  • 職務給(海外):「職務」に焦点を当てて給料が決める

日本では歴史的に、生活給思想から能力給という考え方に変遷し、今では職能給や役割給という賃金形態になっています。

このあたりの歴史的経緯については「新しい労働社会―雇用システムの再構築へ」で詳しく解説されていますので、こちらをご一読ください。

職能給と職務給が混在するハイブリッド型賃金

また、たまに「当社では職務給にしています」という方もいますが、純粋な職務給というより、職能給と職務給が混在する、いわゆるハイブリッド型になっている場合がほとんどです。

また、評価基準に能力評価が入っている場合は、職能給的な要素が入っていることになります。

先程ご紹介した「新しい労働社会―雇用システムの再構築へ」を読み、賃金制度の歴史を学んでいくとわかりますが、日本人の評価や給料に対する考え方というのは意識の奥底に染みついたものがあります。賃金と生活というのは切り離せない関係ですので。

多くの日本企業が導入している「職能給」では「能力の習熟」に応じて支給額が上昇します。能力というのは、上がることはあっても下がることはありません。そのため、職能給では、給料が年々上がっていくことになります。

それに対して「職務給」では、職務の大きさが変わらない限り、支給額は変わりません。職務に関係のない能力やスキルは関係ないわけです。

例えば、コンビニのアルバイトは典型的な職務給ですが、帰国子女で英会話に問題ない人が働いても、英会話能力は職務に関係がないため、時給が変わることはありません。

職能給と職務給の違い、メリットとデメリットについては、きちんと理解しておかないと、昇給や評価などで困ることになるため要注意です。

外資系で働いていた友人が驚いた職務記述書の現状

以上のように、海外における賃金制度の主流は、職務給です。

「こんな職務をします・できます」、「だからこれくらいの給料をください」という考え方です。そのため「こんな職務をする」に相当する「職務内容」が記載された職務記述書が極めて重要になります。

もちろん、人事評価もこの職務記述書に沿って行われます。そのため、日本に職務記述書がないと聞くと、職務記述書がないのにどうやって給料が決まるのか、そしてどのように評価されるのか、と海外の人は驚くわけです。

ちなみに外資系でしか働いた経験のない友人がいるのですが、その人も日本企業の賃金・評価体系を知って「怖くて人事評価なんてできない」と驚いていました。。。

この違いを知っておかないと、国際的に著名なマネジメントの本、例えばマイケル・E. ガーバー「はじめの一歩を踏み出そう―成功する人たちの起業術」で最重視されている役割分担を明確化する文書についても、単なる組織表の解説と大きな誤解をしてしまいます。

職務記述書の例

職務記述書における記載項目は会社によって様々ですが、一般的に共通する項目としては以下のとおりです。

  • 職務名
  • 職務等級
  • 職務概要
  • 職務内容
  • 要求されるスキル・資格

「職務等級」というのが等級制度に関係する部分であり、「職務等級」に定義される「職務内容」と「要求されるスキル・資格」によって賃金のレンジ(幅)に連動します。

そして職務内容の達成状況によって評価が行われます。

逆に言えば、この項目に記載されていない内容は無視されますし、特にマイナス評価を行うと大問題になります。

また実際に、職務内容を記載する際には、いかに数値目標を入れるかがポイントになります。

長年アメリカでマネージャーとして働いた人に話を聞きましたが、「多少無理をしてでも必ず数値目標を入れる、数値目標を入れずに人事評価は不可能」と断言していました。

まとめ

今回は、職務記述書・ジョブ・ディスクリプションに関して説明をしましたが、イメージが湧きましたでしょうか?

現在、日本ではグローバル化、ダイバーシティといった議論に併せて、働き改革、同一労働同一賃金が大きな話題となっており、その中で切っても切れないのがこの職務記述書・ジョブ・ディスクリプションです。

そして、職務記述書の大きなメリットは、採用における募集要項に利用できるという点です。

日本にはジョブ・ディスクリプションがないと海外の友人に紹介すると「では、何を基準に仕事を決めるのか?」と驚かれます。

求職者もジョブ・ディスクリプションを見て応募するし、会社側もどうやって採用を決めるのかと不思議に思うわけです。

なお、同一労働同一賃金について新しい議論と勘違いしている人が多くいますが、実は日本でも昔に議論されていたものです。この点については以下の記事で解説していますのでご参考下さい。

関連:50年前に議論されていた同一労働同一賃金とは?

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