従業員を募集・採用する際の注意点・法令・裁判例を用いて解説!

最近は人手不足ということもあって、採用に関する相談を受けることが多くなっているのですが、募集・採用時の法律上の注意点を理解していますか?

近年はブラック企業や求人詐欺という言葉が一般的になっています。

そのため、求職者の視点から見た怪しい企業に見えないかと注意することも必要ですし、何より募集・採用をしているにもかかわらず、法令に違反するようなことをしていれば、デメリットしかありません。

そこで、今回は募集・採用時における法令の注意点について、裁判例を引用しつつ解説します。

最初に結論を書くと、企業には採用の自由が認められている、ただし、法令による制約もあるということです。

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採用の自由とは?

まず、採用に関して有名な判例があります。

企業には、経済活動の一環としての契約締結の自由がある、つまり事業のために、どのような人をどのような条件で雇うかは自由なわけです。

これが、採用の自由です。

ただし、以下の判例を見ていただくとわかるとおり、法律その他による特別の制限がない限りという条件が付いています。

三菱樹脂事件(最大判昭和48年12月12日)
  • 労働者が採用試験の際に、面接試験で虚偽の回答をしたため、企業が試用期間の満了に当たり本採用を拒否したことについて、裁判所は雇入れの拒否を認め得るとした事案
  • 企業は、経済活動の一環としてする契約締結の自由を有し、自己の営業のために労働者を雇用するにあたり、いかなる者を雇い入れるか、いかなる条件でこれを雇うかについて、法律その他による特別の制限がない限り、原則として自由にこれを決定することができる

これは昭和48年という昔の判決で、今の感覚からすると少し違和感のあるものです。

この面接試験での虚偽の回答をした労働者というのは、在学中に学生運動に従事しており、その事実を隠していたわけですが、最高裁は「会社は労働者の採否決定に当たり、労働者の思想・信条を調査」することを適法としているためです。

今ではもちろん、個人情報保護法の関係から、思想・信条に関する情報収集や採用前に社員の健康情報を取得することはプライバシー保護の観点から制限されています。

ただし、採用の自由を広く認めるという判例の考え方は、現在も存在しています。

募集・採用時における法律上の注意点

前述のとおり、企業には採用の自由があるわけですが「法律その他による特別の制限」があれば、話は別です。

特に注意しておきたいのが以下の法律です。

主な法律その他による特別の制限
  • 雇用対策法による年齢制限の禁止
  • 男女雇用機会均等法による性別制限の禁止
  • 職業安定法による虚偽の求人広告の禁止
  • 労働組合法による黄犬契約の禁止

年齢・性別による制限の禁止と例外

求人の際に、年齢や性別で制限をかけることは、雇用対策法・男女雇用機会均等法により禁止されています。

男女雇用機会均等法第5条、雇用対策法第10条及び雇用対策法施行規則第1条の3
  • 企業は、労働者の募集及び採用について、性別に関わりなく、また一定の場合を除き、年齢に関わりなく均等な機会を与えなければならない。

ただし、以下の雇用対策法施行規則第1条の3により、合理的な理由がある場合は年齢による制限が認められています

年齢制限が認められる場合
  • 定年の年齢を上限に、その年齢を下回ることを条件として労働者の募集及び採用を行う場合(無期労働契約の締結が目的の場合に限る)
  • 労働基準法等の法令の規定により年齢制限がある場合
  • 長期間の勤務によるキャリア形成を図る目的から、青少年等の募集及び採用を行う場合(無期労働契約の締結が目的の場合に限る)
  • 技能・知識の継承を図る目的から、特定の職種の労働者数が相当程度少ない特定の年齢層に限定する場合(無期労働契約の締結が目的の場合に限る)
  • 芸術・芸能の分野における表現の真実性等を確保するために特定の年齢の範囲に限定する場合
  • 特定の年齢以上の高年齢者(60歳以上の者)又は特定の年齢の範囲に属する労働者の雇用を促進する場合(国の施策を活用しようとする場合に限る)

虚偽の求人広告の禁止

職業安定法第65条により「虚偽の広告、虚偽の条件を提示し労働者の募集を行った者」は、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金の対象になります。

また、今年(平成30年)1月より、職業安定法の規制が強化されていますので要注意です。

この改正内容は求人詐欺を行っていたブラック企業対策の一環ですが、以下の記事で解説しているため、念のためご確認ください。

平成30年1月改正施行の求人申込み制度の変更点について改正ポイントや改正の背景・理由を交えて解説します。

黄犬契約の禁止

黄犬契約とは、聞きなれない言葉かもしれませんが「こうけんけいやく」「おうけんけいやく」と読みます。

黄犬契約は、英語のyello-dog contractが直訳されたもので、「雇用社会の25の疑問 労働法再入門」によると、yello-dogとは「臆病者」の比喩なので、使用者の圧力に屈して労働組合に加入しない臆病者の契約という意味だろう、と書かれています。

労働組合法第7条第1項により「労働者が労働組合に加入しないこと、労働組合から脱退することを雇用条件とすること」は不当労働行為であり、禁止されています。

まとめ

募集・採用時における法令の注意点をまとめると、冒頭にも書いたとおり、企業には採用の自由が広く認められている。ただし、法令による制約もあるということです。

募集・採用というのは会社の広報と同じです。法令に違反した採用活動を行えば、悪評が広まってしまいますので注意しましょう。

なお、以下の記事では、面接時の注意点、質問禁止事項などをまとめています。

求職者を見極める面接は採用の最重要事項ですが、NG質問というのは意外とあり、人事担当者は面接を行う経営者や管理職に事前に注意しておくことが大事です。

横柄な面接担当者は相変わらず存在するようですが、法令により面接時の質問は明確に規制されています。

また、採用しようと決めてからは様々な手続きが必要になってきます。その1つが内定です。内定と内々定の違いを正しく理解していますか?

内定に関する法的性質については以下の記事で詳しく解説していますのでご参考ください。

採用内定に関する法的性質・トラブルの多い内定取消について判例・裁判例を用いて解説します。

オススメの求人・転職サイトと利用法

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また、ブランク期間があると、マイナスのイメージを持つ採用担当者がいることも確かです。

そのため、なるべく無職の期間を空けないように、できる限り今の会社で働きながら、次の転職先の内定をもらうことが大事です

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[2017年5月16日公開、2018年1月23日追記]

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この記事を書いた人


安部敏志:社会保険労務士

「就業規則は会社内の働き方のルールであり、社内で自ら作れるようになるべき」という信念のもと、福岡県を拠点に、中小企業の人事担当者の育成に従事。
その他、専門雑誌等の記事の執筆にも積極的に対応。

事務所公式サイト:あべ社労士事務所

なお、同業の社労士から事務所運営や営業方法などの相談を受けることが増えていますが、当事務所は開業当時から この方法をそのとおりに実行しているだけです。

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