労働基準法改正により企業は年5日の有給休暇取得が義務化される!

厚生労働省は、企業に対して少なくとも年間5日の有給休暇を消化させるための義務を課す方針を、厚生労働省・労働基準法等の一部を改正する法律案要綱の中で、発表しました。

この方針は正社員だけでなく、パートタイマー、アルバイトの人も含んでいることに注意してください。

今回は、労働基準法改正によって、企業に新たに義務づけられる年5日の有給休暇消化に関する方針について解説します。

2016/12/17追記

この労働基準法改正案は平成27年度通常国会に提出され、当初は平成28年4月より施行予定でした。

ただ、大きな議論となる高度プロフェッショナル制度を含むものであり、選挙前には審議すらされないだろうと予想していましたが、やはり2016夏の参議院選挙が終わるまで手を付けられませんでした。その後の臨時国会でも結局審議すらされず、結局臨時国会は閉会。。。

続報が入り次第、このサイトでも情報を発信していきます。

スポンサーリンク

1. 対象となる労働者とその条件

対象となる労働者は、正社員だけではありません。アルバイトを含むパートタイム労働者も対象となります。

ただし、この方針には条件がついており、「年次有給休暇の日数が10日以上である労働者」となっています。

この条件を理解するには、労働基準法に基づく有給休暇の付与日数をきちんと理解しておかなければなりません。

1-1. 正社員などの有給休暇日数

まず、基本的な有給休暇の日数については、法律によって以下の表のとおり定められています。

雇われた日からの勤続期間 付与される休暇の日数
6か月 10日
1年6か月 11日
2年6か月 12日
3年6か月 14日
4年6か月 16日
5年6か月 18日
6年6か月 20日

タイトルには、わかりやすく「正社員などの有給休暇日数」と書きましたが、この表が適用されるのは、正確に言えば

  • 労働時間が週30時間以上、労働日数が週5日以上の労働者、又は1年間の労働日数が217日以上の労働者

であり、社員の呼称が、正社員であろうが、パートタイム労働者であろうが、アルバイトであろうが関係ありません。

そして、今回の方針の対象は、「年次有給休暇の日数が10日以上である労働者」になりますので、「労働時間が週30時間以上、労働日数が週5日以上の労働者、又は1年間の労働日数が217日以上の労働者」はすべて今回の方針の対象となります。

1-2. パートタイム労働者などの有給休暇日数

次に、一般的にはパートタイム労働者と呼ばれる、週3日、週4日勤務など、週の中で働く日数(所定労働日数と言います)が少ない労働者の場合を解説します。

こちらは、少し複雑になりますが、以下の表のように有給休暇が比例付与されます。

具体的に解説すると、この表が適用される労働者は、「労働時間が週30時間未満で、かつ、週の労働日数が4日以下」の場合です。

週の労働日数が1日であっても、法令上、年次有給休暇は付与されますが、今回は、「年間5日の有給休暇を消化させるための義務を課す」という方針の対象となる、年間10日以上になる労働者の条件のみを抜粋しています。

週の労働日数 雇入れた日から起算した継続勤務期間(単位:年)
0.5 1.5 2.5 3.5 4.5 5.5 6.5以上
4日 7 8 9 10 12 13 15
3日 5 6 6 8 9 10 11

今回の方針の対象は、「年次有給休暇の付与日数が10日以上である労働者」となりますので、この表を見ると、

  • 週3日働いている労働者で、勤続期間が5.5年以上の人
  • 週4日働いている労働者で、勤続期間が3.5年以上の人

に対して、会社は、有給休暇の5日間の消化が義務づけられることになります。

こちらも、タイトルには、わかりやすく「パートタイム労働者などの有給休暇日数」と書いていますが、正確には、「労働時間が週30時間未満で、かつ、週の労働日数が4日以下の場合の労働者」になるのでご注意ください。

例えば、パートタイム労働者という名称の雇用形態であっても、労働時間が週30時間以上であれば、適用される表は、1-2の表ではなく、1-1の表になるということです。

上の表は今回の解説用に一部省略していますので、パートやアルバイトの有給休暇の日数については、以下の記事をご参考下さい。

パート・アルバイトの有給休暇の日数を徹底解説!
あまりにも多くの質問を受けるので、今回はパート・アルバイトの有給休暇に関して適用する基準、2種類の表とその考え方、具体的な日数などを徹底的に解説します。

2. 具体的な有給休暇消化の対応は就業規則に規定すること

また、この改正によって、今後、会社には各労働者の年次有給休暇の取得状況を確実に把握するために、年次有給休暇の管理簿の作成が義務づけられることになります。

管理簿の様式は特に定められていませんが、有給休暇の付与日数と実際の取得日数を記載しておけば十分でしょう。

いずれにしろ、会社側としては、この改正を踏まえ、就業規則の整備が必要になります。

また、実務的な観点から考えると、年間の業務スケジュールや月ごとの休日数を考えつつ、社員と相談した上で、どのように5日間の有給休暇を付与していくか計画的に準備することが必要です。

社員に集中的に5日間休まれるよりは、2か月に1度、ある意味、祝日のような考え方で付与していく方が実務的には望ましいわけですから、今後、会社としては積極的に有給休暇の取得を奨励していくスタンスになります。

以下の記事で詳しく解説していますが、実は戦後のたった6年間ではあったものの、有給休暇の取得をほぼ義務づけるような制度があったんですが。今回の法改正はその時代の考え方を一部取り入れているとも言えます。

有給休暇の取得が義務だった時代があったことを知ってましたか?
調べ物をしていて衝撃的な事実を知りました。使用者が年次有給休暇を取得させなければならない時代があったんですね!

有給休暇を付与しない場合は罰則・罰金あり!

また、有給休暇の付与義務ということで、今回の改正案が話題になりましたが、実は、労働者が請求する有給休暇は経営者や管理職は拒否できません。

「うちには有給休暇はない」、「パートやアルバイトだから有給休暇はない」と誤解して言ってしまう人がいるようですが、それは法律で定められたものなので、「有給休暇がない」、「有給休暇を取得させない」のは違法です。

以下の記事で詳細に解説していますが、会社の裁量としてできるのは「時季の指定」だけであり、有給休暇を付与しない場合は、労働関係の刑法とも言われる労働基準法で明確に、6箇月以下の懲役又は30万円以下の罰金という罰則が定められています

実際、裁判でも、有給休暇は原則拒否できないと判断されていますし。

罰則あり!有給休暇の日数等の基礎知識を完全解説!
労使双方に誤解の多い有給休暇の日数・発生要件等の基礎知識について、法令の内容、判例などを活用し、完全解説します。

労働者の権利意識はこの数年で格段に高まっていますし、「給料をもらいながら休むなんて言語道断だ!」なんて一昔前のように平気で言っていたら、労働基準監督署に駆け込まれて指導を受けるだけですからね。

今回のポイント

最後に、ポイントをまとめておきます。

会社には、以下の条件を満たす労働者に対して、年間5日の有給休暇を消化させるための義務が課される。

  • 労働時間が週30時間以上、労働日数が週5日以上の労働者、又は1年間の労働日数が217日以上の労働者で、勤続期間が6か月以上の労働者
  • 労働時間が週30時間未満で、かつ、週の労働日数が4日以下の労働者の場合は、以下の労働者
    • 週3日働き、勤続期間が5.5年以上の労働者
    • 週4日働き、勤続期間が3.5年以上の労働者

会社には、各労働者の年次有給休暇の取得状況を確実に把握するために、年次有給休暇の管理簿の作成が義務づけられる。

会社としては、5日間の有給休暇について、休暇の集中化を避けるため、年間行事スケジュールを考えつつ、労働者と相談し、計画的に付与していくことが必要。

なお、今回の有給休暇と同じくらい誤解の多いのが法的な休憩時間の定義です。休憩時間に電話当番を指示するのは違法ってご存知ですか?

ちゃんと休憩できてる? 労働基準法の基礎知識-6時間勤務なら休憩なしって本当?
今回は、人事労務管理における休憩時間の基礎知識として、休憩時間の基本・長さ、3つの原則、そして最後に実務上の注意点について解説します。

また、有給休暇以外にも、法律で義務づけられている休暇・休業制度は意外と多くあります。

会社の就業規則を職業柄よく見ますが、結構就業規則に規定されていない休暇・休業制度があるので、念のため以下の記事で確認しておいてください。規定されていなくても法律で義務づけられているので、労働者に請求されたら付与するしかないのですけど。

【まとめ】有給休暇や産休などの法定休暇に関する義務の内容一覧
有給休暇、産休・育休といった休暇・休業制度について、何が義務で何が任意なのか、何が有給で何が無給でもよいのかご存じですか? 今回は、経営者・人事担当者が抑えておきたい休暇・休業制度の種類、給料の要否などについて解説します。

参考情報:有給休暇の取得率

そもそも、なぜこのような方針が発表されたのかという背景を理解しておくことは大切です。

それは、よく言われることですが、日本の年次有給休暇の取得率の低さです。

つまり、今回の有給休暇の義務化というのは、海外に比べて低いと言われ続けている有給休暇の取得率を何とかして上げたいという政府の意思が示されているわけです。

有給休暇の取得率は47.6%・・・今後義務化される有給消化の影響は・・・
平成27年就労条件総合調査結果に基づく、有給休暇の取得日数・取得率、産業別の取得率、現在国会に提出されている労働基準法改正案に基づく今後の動向についてご紹介します。

こんな本もあります。労働法を専門にしている大学教授による本で、タイトルは軽妙ですが、内容は法的な整理や判例を用いて解説されているため、正確に人事労務のよくあるトラブルと対処法を学ぶことができます。

最近は人事担当者よりも労働法令に詳しい社員もいるので、どこまで指導できるのか、どこからは指導できないのか、そのような微妙なラインを知るための入門書としてオススメです。

あなたの会社の就業規則は大丈夫ですか?

あなたが就業規則の変更の必要があるかもしれないと思っても、本当に必要なのか、専門家に高いお金を払って依頼する価値があるのか不安に思うかもしれません。

見直しを依頼する前に、まずは就業規則の診断をしてみませんか?

あべ社労士事務所では、満足いただけなかった場合、全額返金保証の「就業規則の診断サービス」を行っています。

お知らせ 確定申告の準備を1日半で完了! クラウド会計ソフトfreeeは個人事業主に必須のツール!
お知らせ マイナンバー対応にお悩みの人事担当者のご要望にお応えし、就業規則の規定例を作成しました!
労働基準法改正により企業は年5日の有給休暇取得が義務化される!
本記事以外の人事労務情報も満載の
Facebookページを、
いいねしてチェックしよう!
スポンサーリンク

フォローする

人事の秘訣を知りたくありませんか?

人事の秘訣を知りたくありませんか?

本音満載で人事の秘訣を毎週お伝えしています。

過去の配信情報など、さらに詳しい情報をお知りになりたい場合は、こちらをご覧ください。

注意
*は必須項目を示しています。なお、氏名の欄には本名を漢字で入れてください。「たこ」など明らかにふざけた名前を登録している方がいますが、見つけ次第削除しています。


この記事を書いた人


安部敏志

あべ社労士事務所代表・社会保険労務士

国家公務員I種職員として労働基準法・労働安全衛生法等の立案や企業への徹底的な指導に従事した経験を武器に、退職後は逆に会社を守る立場として経営者・人事担当者からの人事労務管理に関するご相談に対応。

最近は記事の執筆やセミナー講師の依頼にも積極的に対応。仕事内容がわかりにくいとよく言われるので、業務内容・実績を紹介するページを作成しました!

ご相談・ご依頼はこちらから

error: Content is protected !!