就業規則がない会社のメリットとデメリット

こんにちは。福岡の社労士・安部敏志です。

さて、当事務所の主な業務は就業規則の作成・変更であるため「なぜ就業規則が必要なのか?」、「就業規則がなかったらどうなるのか?」という問い合わせは通常ありえません。

ただ、長年海外で働いていた人の場合は就業規則って何なのかと不思議に思うそうで、たまに質問をされます。

例えば、アメリカではエンプロイー・ハンドブックなどがありますが、これは、主として職場規律を定めたものであり、労働契約の内容とはなりません。

労働契約はあくまで個別に締結するものであり、詳細な労働条件は個別に定められます。職務記述書(Job Description)がある職務給と職能給の違いとも言えますが。なお、職務記述書については以下の記事をご参考まで。

日本企業で今後重視されるジョブ・ディスクリプション(職務記述書)とは?
現在、同一労働同一賃金の議論が盛んにされていますが、これから日本でも常識となるかもしれません。今回は海外では常識のジョブ・ディスクリプション(職務記述書)について解説します。

そこで、今回は、就業規則がない会社のメリットとデメリットについて解説します。

一言で言えば「就業規則の作成は法律で決まっているし、罰則もある」となりますが、それでは元も子もないので、今回は法律の話は置いておきます。

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就業規則がない会社のメリット

お金・時間がかからない

最大のメリットはこれでしょう。

社労士に依頼すればお金がかかりますし、自分で就業規則を作成するとしても時間がかかります。就業規則に効力を持たせるには、作成だけでなく、届出、周知も必要です。

就業規則の内容を変更する際にも手続きがありますし、不利益変更の場合は労働者の合意、合意が得られない場合は合理的なものと説明できるための準備が必要です。

面倒がない、というのは大きなメリットですね。

社長がルールになる

就業規則とは、労働者が就業上遵守すべき規律(服務規律) + 労働条件の詳細、この2つによって構成されます。

就業規則がなければ、これらを確認できないわけですから、社長に聞くしかありません。社長の気分によって回答が変わるとしても、そのときの回答しか社員にとっては頼りになるものがないわけですから、まさに

社長の言うことは絶対!

という状態です。

実際、就業規則があっても周知されず、改定もされていなければ、単なる置物ですから、ワンマン経営の個人商店型の会社ではこの状態が多そうです。

それでも、社長が、気分の浮き沈みがほとんどなく、どの社員に対しても公平であろうとする人であれば、特段の問題は生じないでしょう。

就業規則がない会社のデメリット

争えば確実に負ける

デメリットとして最も大きいのはこの点でしょう。就業規則は労働者のためのものと思っている時点で完全に間違っています。

就業規則があろうがなかろうが、労働基準法令をはじめ各労働関係法は日本にある以上適用されますし、民事上の権利義務の関係でも問題が生じます。

就業規則を作成することで、会社と労働者の約束事であるとして公的な形で会社の規範を示すことができますが、それがなければ、確実に負けます。

社長の頭の中にあるルールが通用するのは社内のみです。第三者が入ってきた段階で頭の中にあるルールは即座に無意味なものになります。

実は、就業規則というのは会社を守るものです。

後述しますが、就業規則に沿った運用をしておけば、その規定が合理的なものであれば、裁判所もそれを尊重してくれます。

懲戒ができない

会社というのは様々な価値観を持った人が集まる場所です。様々な価値観を持った人が集まれば一定のルールが必要であり、そのルールに従えない人には注意する必要があります。

その一定のルールを示すのが服務規律であり、この服務規律に違反すれば、通常懲戒処分を行います。懲戒というと解雇をイメージする人がいますが、解雇は懲戒の一種に過ぎません。

一般的に、懲戒は、就業規則では以下の種類が規定されます。なお、この中で最も軽い処分はけん責であり、簡単に言うと始末書を書かせ戒めることです。

  • けん責
  • 減給
  • 降格
  • 出勤停止
  • 解雇

使用者が労働者を懲戒する際の要件として有名なのが、以下のフジ興産事件です。

フジ興産事件(最高裁第2小法廷 平成15年10月10日判決)
使用者が労働者を懲戒するには、あらかじめ就業規則において懲戒の種別および事由を定めておくことを要する。そして、就業規則が法的規範としての性質を有するものとして、拘束力を生ずるためには、その内容を適用を受ける事業場の労働者に周知させる手続きが採られていることを要する。

実際、この判決を受けて、法律としても労働契約法の第7条に就業規則周知の効力要件が明記されています。

遅刻・早退時の賃金控除ができない

労働者による労務の提供がなければ、使用者には賃金を支払う義務はありません。これが「ノーワーク・ノーペイ(No Work No Pay)の原則」ですが、就業規則がなければ、そもそも始業・終業時刻についても曖昧な状態になります。

そのため、遅刻・早退・欠勤に関する賃金控除については通常就業規則に定めますし、その控除額についても計算方法を規定しておきます。

例えば、原則として、30分遅刻をした場合、その30分の不就労部分について控除は可能です。これは制裁規定には該当しません。しかし時刻・計算方法が不明なため月給制の場合、根拠がなければ計算が困難になりますし、遅刻時間を上回る控除をすることは制裁行為に該当するため、就業規則の根拠がなければできません。

つまり、労務の提供がなければ会社も賃金を支払う義務が本来なくなるわけですが、会社は賃金控除ができないことになります。

雇用関係の助成金がもらえない

従業員を新たに雇い入れたり、処遇や職場環境の改善、仕事と家庭の両立に取り組んだ場合など、条件を満たすことで、行政から様々な助成金をもらうことができます。

そしてほとんど全ての助成金の支給条件の中に、就業規則への規定が入っています。

助成金の目的は、行政が積極的に進めたい人事制度を促進するためです。そして会社内の人事制度として構築されたと正式に認めるのは、就業規則に規定されたときです。就業規則がなければ、助成金はもらえないと思っておきましょう。

参考

事業主の方のための雇用関係助成金

まとめ

今回は、就業規則がない会社のメリットとデメリットについて解説しましたが、いかがでしたでしょうか?

実は、「社労士はよく就業規則の作成・変更を勧めるが、それはあなた方の商売だからでしょ」と言われたことが、この記事を書くことにしたきっかけです。

確かに、それは否定できない事実ですし、デメリットばかり強調すると、そう受け取られるのかなと思い、今回はメリットについても思いつく限り書いてみることにしました。

といっても、商売として勧めていることが悪いわけでもないし、別に不要なものを売っているわけではありませんけど。

それに、私の場合はご依頼を受けてから対応しているため、営業もしていませんし。。。きちんと営業をすべしとお説教を受けたことはありますが。。。

そのため、この記事を読んでも「納得できない、もっとメリットはある、やっぱり就業規則は不要なのではないか?」と思う方はいるかもしれません。

そんなときは、ぜひお近くのどなたかにご相談してみてください! もっと詳しい説明を受けることができるかもしれません。

くれぐれも就業規則の必要性の有無について、当事務所に相談しないでくださいね!

「あなたが不要と思っているならきっと不要でしょう。それで何かトラブルが生じても私の問題ではありません。」としか回答しませんのでw

なお、就業規則の基礎知識については以下の記事で徹底的に解説していますのでご参考下さい。

本当は怖い就業規則! よくある間違い・落とし穴を徹底解説!
人を雇っている会社のルールブックとも言える就業規則について、中小企業でよくある間違い、その落とし穴について解説します。「就業規則の作成は怖くない」「簡単にできる」と書く素人がいますが、実際に裁判になってからでは遅いのです。
就業規則がない会社のメリットとデメリット
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この記事を書いた人


安部敏志

あべ社労士事務所代表・社会保険労務士

国家公務員I種職員として労働基準法・労働安全衛生法等の立案や企業への徹底的な指導に従事した経験を武器に、退職後は逆に会社を守る立場として経営者・人事担当者からの人事労務管理に関するご相談に対応。

最近は記事の執筆やセミナー講師の依頼にも積極的に対応。仕事内容がわかりにくいとよく言われるので、業務内容・実績を紹介するページを作成しました!

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