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育児・介護休業法の改正内容(2017年1月から義務化)

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2017年1月より育児・介護休業法の改正内容が施行されます。今回の改正内容は多岐に亘っており、人事担当者は社員の育児・介護に関する社内の人事制度を整備しておかなければなりません。

まず改正内容のポイントは以下の8つです。

  1. 介護休業の分割取得
  2. 介護休暇の取得単位の柔軟化
  3. 介護のための所定労働時間の短縮措置等
  4. 介護のための所定外労働の制限(残業の免除)
  5. 有期契約労働者の育児休業の取得要件の緩和
  6. 子の看護休暇の取得単位の柔軟化
  7. 育児休業等の対象となる子の範囲
  8. いわゆるマタハラ・パタハラなどの防止措置

この中で特に重要なのが、現行制度で規定のない「介護のための所定外労働の制限(残業の免除)」、つまり、家族の介護をする労働者の残業が免除される制度です。

1. 介護休業の分割取得

これまでの介護休業では、通算93日まで原則1回に限り取得可能であったわけですが、今後は上限を3回に、分割して取得可能となるものです。

通算93日までという日数の上限の変更はありません。これは、介護休業の場合、育児休業と異なり、長期間の休業となっていない実情を踏まえての変更です。

実務的な対応としては、就業規則または育児・介護休業規程の変更になります。

2. 介護休暇の取得単位の柔軟化

これまでの介護休暇については1日単位での取得となっていましたが、今後は半日単位での取得が可能となります。

ただし、この介護休暇の取得については、有給休暇と同じような運用を行っている会社も多く、既に半日単位、または時間単位の取得を認めているところもあります。

その場合の実務的な対応は特にありませんが、念のため就業規則または育児・介護休業規程できちんと規定されているか確認しておきましょう。

ちなみに、「介護休業」と「介護休暇」は間違いやすく、たまに混同している人がいますが、別の制度になるのでご注意ください。

同じ法律を根拠とする休業・休暇制度ですが、根拠となる条文が異なり、以下のように日数も異なります。

  • 介護休業:通算93日を上限に2017年1月より3回まで取得可能な休業
  • 介護休暇:1年に5日(対象家族が2人以上の場合は10日)まで取得可能な休暇

3. 介護のための所定労働時間の短縮措置等

これまで介護のための所定労働時間の短縮措置等については、介護休業として取得した日数と通算して93日の範囲内で取得可能とされてきましたが、今後は、介護休業とは別に、利用開始から3年の間で2回以上の利用が可能となりました。

例えば、これまでは、介護休業として7日間を使用していたら、93 - 7 = 86日の間、所定労働時間の短縮措置等を取得することができました。

今後は、介護休業と別になるため、利用開始から3年間、つまり最大で3年間、所定労働時間の短縮措置等を取得することができるわけです。

なお、所定労働時間の短縮措置等とは以下のとおりであり、事業主は労働者に対して以下のうちいずれかの措置を選択して講じる義務(選択的措置義務)があります。

  • 所定労働時間の短縮措置
  • フレックスタイム制度
  • 始業・終業時刻の繰上げ・繰下げ
  • 労働者が利用する介護サービス費用の助成その他これに準じる制度

実務的な対応としては、就業規則または育児・介護休業規程の変更になり、また対応すべき期間が大きく変更となっているため、以下の点について調査・検討しておくべきです。

  1. 対象者はどの程度いるか?
  2. 人員配置は現状のままでよいか?

4. 介護のための所定外労働の制限(残業の免除)

介護のための所定外労働の制限(残業の免除)というのは、これまでなかった今回新設された制度です。

ただ、法律の名称が「育児・介護休業法」となっているとおり、育児と介護という違いはあっても、制度設計の部分はとても似ています。

現行の制度として、すでに「育児のための所定外労働の制限(残業の免除)」はあるため、これと同じ扱いとなります。

ただし、対象期間について「介護の必要がなくなるまで」となっているため、対応すべき期間が会社として想定できません。

実務的な対応としては、就業規則または育児・介護休業規程の変更になり、また対応すべき期間も想定できないため、以下の点について調査・検討しておくべきです。

  1. 対象者はどの程度いるか?
  2. 人員配置は現状のままでよいか?

5. 有期契約労働者の育児休業の取得要件の緩和

今後、有期契約労働者の育児休業の取得要件が緩和されます。

子の年齢の違いは明確ですが、それよりも「雇用継続の見込みがあること」から「雇用契約がなくなることが明らかでないこと」と変更となったため、契約更新が不明であっても、育児休業の対象となり得ることが明確になりました。

実務的な対応としては、就業規則または育児・介護休業規程の変更になりますが、有期契約労働者が多数いる会社では、以下の点について調査・検討しておくべきです。

  1. 対象者はどの程度いるか?
  2. 人員配置は現状のままでよいか?

6. 子の看護休暇の取得単位の柔軟化

これは2の介護休暇と同様の対応になります。

これまでの子の看護休暇については1日単位での取得となっていましたが、今後は半日単位での取得が可能となります。

ただし、この子の看護休暇についても、介護休暇と同様に、有給休暇と同じような運用を行っている会社も多く、既に半日単位、または時間単位の取得を認めているところもあります。

その場合の実務的な対応は特にありませんが、念のため就業規則または育児・介護休業規程できちんと規定されているか確認しておきましょう。

7. 育児休業等の対象となる子の範囲

育児休業、子の看護休暇、所定労働の制限(残業の免除)、時間外労働の制限、深夜業の制限、所定労働時間の短縮措置が取得できる対象の範囲が、今後は広くなります。

実務的な対応としては、就業規則または育児・介護休業規程の変更になります。

なお、育児休業に関する詳細は以下の記事で解説しています。

関連:育児休業の対象者・期間・賃金等の基礎知識

8. いわゆるマタハラ・パタハラなどの防止措置

これまでは事業主による妊娠・出産・育児休業・介護休業等を理由とする不利益取扱いが禁止されていましたが、今後は、それに加えて、上司・同僚からの妊娠・出産、育児休業・介護休業等を理由とする嫌がらせ等(いわゆるマタハラ・パタハラなど)を防止する措置が事業主へ新たに義務づけられます。

なお、不利益な取扱いとしては以下が例示されています。

  • 解雇
  • 雇止め
  • 契約更新回数の引き下げ
  • 退職や正社員を非正規社員とするような契約内容変更の強要
  • 降格
  • 減給
  • 賞与等における不利益な算定
  • 不利益な配置変更
  • 不利益な自宅待機命令
  • 昇進・昇格の人事考課で不利益な評価を行う
  • 仕事をさせない・もっぱら雑務をさせるなど就業環境を害する行為をする

また、不利益な取扱いの禁止という点では何もしなくてもよかったわけですが、今後は「防止措置義務」ということですから能動的に準備する必要があります。

実務的な対応としては、就業規則または育児・介護休業規程の変更になりますが、その中で、ハラスメントに関する服務規律や懲戒の内容を規定し、相談体制の整備、そしてハラスメント防止に関する会社の方針を労働者への周知・啓発を行う必要があります。

会社の方針を周知する際には厚生労働省が以下のパンフレットで例(P41)を示していますのでご参考下さい。

参考:育児・介護休業等に関する規則の規定例(厚生労働省)

まとめ

今回は改正点を一つ一つ解説してきましたが、特徴的な点といえるのが最近問題になっている介護離職対策です。

日本は世界に先駆けて「超高齢社会」に突入しており、介護の問題というのは育児以上に多くの人が関係する切実な問題ですし、世界でも前例のない問題に日本は立ち向かっていかなければなりません。

ただ、実務的には、改正点の1から7については、就業規則または育児・介護休業規程の微修正で十分です。もちろん、これまでの育児・介護休業制度への対応がきちんとなされているという前提ですが。

むしろ力を入れるべきは、改正点の8であり、きちんと時間をかけて準備しておく必要があります。

個人的に、日本企業の経営者や管理職はハラスメントに関する意識が低いと思っていますし、実際、行政による統計でもハラスメントに関する割合はここ数年首位になっています。

ハラスメント対策については管理職の個人的な問題ではなく、会社の問題であると考えておかないと思わぬ経営リスクになります。

※2017/9/21追記

政治的な背景もあって年に2回改正施行されるという不思議なことが起きていますが、平成29年10月から施行される育児・介護休業法の改正内容は以下の記事で解説しています。

関連:育児・介護休業法の平成29年10月改正内容と実務的な対応を解説

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