従業員の募集時に留意すべき職業安定法による求人申込み制度

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分類: 採用

ブラック企業や求人詐欺といった社会的問題を背景に、従業員の募集時に明示すべき事項が大幅に追加されているので要注意です。

平成29年3月31日に改正された職業安定法が平成30年1月1日に施行され、概要は以下のとおりです。

  1. 労働者の募集をする際、求職者等に明示すべき事項に以下が追加
    • 試用期間の有無・期間、試用期間中の労働条件
    • 裁量労働制を適用する場合にはその旨
    • 固定残業代制を採用する場合、固定残業代を除いた基本給の額、固定残業代に関する計算方法、固定残業時間を超える時間外労働等に対する割増賃金の追加支給をすること
    • 労働者を雇用する者の名称
    • 派遣労働者として雇用する場合はその旨
  2. 企業がハローワークやホームページ等で求人の申し込みをする際に、当初明示した労働条件に変更があった場合は、その確定後、速やかに変更内容を求職者に明示すること

職業安定法改正の経緯・理由

まず、今回の職業安定法の改正点を解説する前に、改正理由を説明しておきます。改正理由を知ることで、なぜ今回の改正があったのか理解しやすくなります。

今回の改正はブラック企業による求人詐欺対策です。

求人詐欺とは、求人の際に、事実と異なる素晴らしい労働条件を誇張して見せて人を集め、実際には著しく低下させた労働契約を締結する行為です。

この手法を乱用したのがブラック企業と名指しされたこともある飲食業(1社ではなく複数)であり、以下は実際に裁判にもなった飲食業で行われていた実例です。

  • 求人情報には新卒者の最低支給額は19万4,500円と書いていた。
  • 実際はこのうちの71,300円分は月80時間以上の残業代を含むもの、つまり固定残業代を含むものであった。
  • 実際の基本給は12万3,200円だった。
  • しかも、固定残業代は通常残業をしなくても払うものだが、この会社では残業時間が80時間に達しなかった場合は賃金を減らしていた。

これまでは、求人時に示す労働条件と労働契約締結時に示す労働条件が異なっていても、明確に違法とはなっていませんでした。

そのため、悪質な企業は、求人時に誇張・虚偽の労働条件を示し、労働契約締結時に正確な労働条件を示す、そのギャップに労働者が気付いても、手遅れという状況があったわけです。

このような問題を踏まえて、今回の改正では労働条件の明示事項の追加、変更内容の明示義務が課されることになったわけです。

求人の際に明示しなければならない労働条件の追加

今回の職業安定法改正により、求人の際に書面で明示しなければならない労働条件として以下の項目が追加されています。

求人の際に書面で明示義務のある労働条件の追加項目
  • 試用期間の有無・期間、試用期間中の労働条件
  • 裁量労働制を適用する場合にはその旨
  • 固定残業代制を採用する場合、固定残業代を除いた基本給の額、固定残業代に関する計算方法、固定残業時間を超える時間外労働等に対する割増賃金の追加支給をすること
  • 労働者を雇用する者の名称
  • 派遣労働者として雇用する場合はその旨

まさに、裁量労働制や固定残業代制など、ブラック企業が悪用していた制度への対策として改正されていることがわかります。

裁量労働制や固定残業代制などの制度を利用するのは構わないけど、それなら最初から求職者に明示しておこうね」ということです。

前述のとおり月給19万円と思ったら基本給は12万円だったり、正社員募集と書いていたのに実際は有期契約労働者だったり、トラブルが尽きなかったわけです。

厚生労働省が毎年発表している「ハローワークにおける求人票の記載内容と実際の労働条件の相違に係る申出等の件数」によると、平成28年度の件数は9,299件にものぼっています。

労働条件を明示する際の遵守事項

また、労働条件を明示する際には遵守すべき事項があり、指針として厚生労働省告示が示されています。

以下はその一部ですが、これは求人をしている企業だけでなく、職業紹介事業者や労働者供給事業者も対象に含まれます。

  • 明示する労働条件は、虚偽または誇大な内容としてはならない。
  • 有期労働契約が試用期間としての性質を持つ場合、試用期間となる有期労働契約期間中の労働条件を明示しなければならない。
  • 労働条件の水準、範囲等を可能な限り限定する配慮が必要。
  • 労働条件は、職場環境を含め可能な限り具体的かつ詳細に明示する配慮が必要。
  • 明示する労働条件に変更の可能性がある場合はその旨を明示し、実際に変更された場合は速やかに知らせる配慮が必要。

まとめ

今回は、平成30年1月1日施行の改正職業安定法を解説しましたが、労働条件の変更明示が必要な場合・変更明示の方法、職業紹介事業者を利用する際の注意点など今回の記事以外にも改正点・周知事項があるため、関心のある方は以下の厚生労働省ウェブサイトをご確認ください。

また、以下の場合は行政による指導監督(行政指導、改善命令、勧告、企業名公表)や罰則等の対象となる場合があるため、要注意です。

行政指導や罰則の対象となる場合
  • 労働条件の不適切な明示(虚偽の内容、不十分な明示)
  • 不適切な変更の明示

参考:採用時に必要な手続きと様式集

人事労務管理では、雇用している間、退職時などにトラブルが発生しますが、重要なのは入口の部分、つまり採用時です。

採用時に適切な契約を結ぶ、服務や秘密保持の誓約書を提出させるなど、人事労務の入口の部分で、会社として可能な限りのリスクヘッジを十分に行っておくことが重要です。

採用と一口に言っても、求人、面接、内定、雇用契約、試用期間と各段階があります。

これらの各段階で厳正な評価・審査を行っている会社は稀です。

服務・秘密保持に関する誓約書の提出がない場合は、勤務を開始させないといった慎重かつ厳しい態度で臨むことで、その後のリスクを大きく減らすことができます。

以下のリンク先には、従業員に記入を求める以下の様式が含まれています。

  1. 採用時誓約書(服務)
  2. 採用時誓約書(秘密保持)
  3. 身元保証書
  4. 賃金の口座振込に関する同意書
  5. 特定個人情報等の取扱いに関する同意書
  6. 雇用契約書(正社員)
  7. 雇用契約書(有期契約社員)
  8. 雇用契約書(パートタイム・アルバイト)
  9. 雇用契約書(再雇用)
  10. 試用期間満了・本採用決定通知書

これらの様式を用いて、人事労務に関するトラブルを予防してください。

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