人事・労務に関係する書類の保存期間を根拠法を含めて解説!

こんにちは。福岡の社労士・安部敏志です。

最近は、人事担当者の育成をして欲しいというご依頼をいただくことが多く、社労士というより人事担当者育成コンサルタントを名乗ろうかと真剣に考えています(^0^)

さて、私が人事担当者の育成をするとき、耳にタコができるくらい何度も強調しているのが「業務の法的根拠を必ず確認する」ということです。

もちろん、法的根拠や法解釈を確認する際には、公的機関が発信する一次情報というのが絶対条件です。

某専門家がブログで書いていたというのはダメです。 ← こんなことを言ったらこの記事も同様になりますが・・・

で、最近質問をよく受けるのが、人事に関係する書類はどれくらいの期間保存する義務があるのか、ということであり、特に以下の質問が多いです。

  • 労使協定の保存期間は? 永久保存って本当?
  • 出勤簿の保存期間は?
  • 雇用契約書・労働条件通知書の保存期間は?
  • タイムカードの保存期間は? 起算日はどのようになる?

長く保存できる方が望ましいことは間違いありません。

ただ、個人番号(マイナンバー)の取扱いのように不要になったら廃棄することが法的に求められていたり、法律では、使用者の負担を考えて最低限の保存期間を定めていたりします。

そのため、人事労務に関係する書類のうち、法的に保存義務が定められている書類は何か、その保存期間は何年かという点について、法的な根拠を踏まえ理解しておくことは、人事担当者にとって「いろはの『い』」です。

そこで、今回は、すべての業種に共通する「人事労務に関係する書類の保存期間」について、根拠となる法令も併せて解説します。なお、保存期間を理解するには、起算日、つまり「いつ」が期間の最初の時点になるのかという点が大事です。

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人事労務に関係する書類の保存期間の一覧

人事労務に関係する書類の保存期間について、以下のとおり一覧にまとめます。なお、今回この一覧をまとめるに際して、1つ1つ根拠条文を確認しています。

文書名 起算日 年限 根拠
労働者名簿 労働者の死亡・退職・解雇の日 3年 労基法109、労基則56
賃金台帳 最後の記入日 3年 労基法109、労基則56
雇入、解雇、退職に関する書類
(雇用契約書、労働条件通知書など)
労働者の死亡・退職・解雇の日 3年 労基法109、労基則56
災害補償に関する書類 災害補償終了日 3年 労基法109、労基則56
賃金その他労働関係の重要書類
(出勤簿、タイムカード等の記録、労使協定の協定書、各種許認可書など)
完結の日 3年 労基法109、労基則56
安全衛生委員会議事録 作成日 3年 安衛法103 安衛則23
健康診断個人票 作成日 5年 安衛法103 安衛則51
面接指導結果 作成日 5年 安衛法103 安衛則52の6
雇用保険被保険者関係届出事務等処理簿 完結の日 4年 徴収則72
労働保険の徴収等に関する書類(上の処理簿以外) 完結の日 3年 徴収則72
雇用保険の被保険者に関する書類

  • 雇用保険被保険者資格取得確認通知書
  • 同資格喪失確認通知書(離職証明書の事業主控)
  • 同転出届受理通知書
  • 同転入届受理通知書
  • 同氏名変更届受理通知書など
完結の日 4年 雇保則143
雇用保険に関する書類

  • 雇用保険適用事業所設置届
  • 雇用保険事業主事業所各種変更届など
完結の日 2年 雇保則143
労災保険に関する書類 完結の日 3年 労災則51
身体障害者の雇用に関する書類 労働者の死亡・退職・解雇の日 3年 障害者雇用促進法則45
健康保険・厚生年金保険に関する書類

  • 健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得確認通知書
  • 標準報酬月額決定通知書
  • 同改定通知書など
完結の日 2年 健保則34、厚年則28

なお、根拠条文について略称にしています。例えば、「労基法」は労働基準法、「労基則」は労働基準法施行規則を意味します。

人事労務に関係する書類の保存期間の解説

上の一覧を見ていただければ、ほとんど理解できると思いますが、わかりにくい部分、どの書類が法令の何に該当するか、起算日をどのように解釈するのかという考え方について解説しておきます。

雇用契約書・労働条件通知書の保存期間

人を雇ったときに交付することが義務づけられている労働条件通知書(雇用契約書は義務ではない)については、労働基準法第109条・施行規則第56条の「雇入、解雇、退職に関する書類」に該当します。

そのため、保存期間は3年間であり、その起算日は労働者の退職又は死亡の日となります。

就業規則は事業場一律の労働条件を規定するものですが、労働条件通知書は各労働者の労働契約の内容を規定するものであり、昨今のブラック企業・ブラックバイト問題の影響もあって、必ず確認される書類であり、作成・保存について特に注意を要する書類です。

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採用時に必要な労働条件の明示義務、労働条件通知書の項目の違い、よくある質問とその回答を図解して解説します。
労働基準法第109条(記録の保存)
使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を3年間保存しなければならない。
労働基準法施行規則第56条
法第109条の規定による記録を保存すべき期間の計算についての起算日は次のとおりとする。
三  雇入れ又は退職に関する書類については、労働者の退職又は死亡の日

労使協定の保存期間

時間外労働・休日労働に関する協定届、いわゆる36協定のような労使協定の保存期間について、「永久保存なのですか?」と質問を受けたことがありますが、そんなことはありません。

なぜ永久保存と思うのか質問したところ、そのように言っている専門家がいるということだったのですが、必ず法的な根拠を確認しましょう。

労使協定については、先程の労働基準法第109条の「賃金その他労働関係に関する重要な書類」に該当するため、保存期間は3年間、そして起算日は労働基準法施行規則第5号に基づき、「完結の日」となります。

「完結の日」が意味する内容は、その労使協定の効力がなくなった日ということです。

労働基準法施行規則第56条
法第109条の規定による記録を保存すべき期間の計算についての起算日は次のとおりとする。
五  賃金その他労働関係に関する重要な書類については、その完結の日

「その他労働関係に関する重要な書類」とは、例えば、出勤簿、タイムカード等の記録、労使協定の協定書および各種許認可書などが該当する。

実務コンメンタール 労働基準法・労働契約法」P488

出勤簿の保存期間

出勤簿の保存期間は、先程の労使協定と同様に、労働基準法第109条の「賃金その他労働関係に関する重要な書類」に該当するため、保存期間は3年間、そして起算日は労働基準法施行規則第5号に基づき、「完結の日」となります。

では、出勤簿の「完結の日」とはどの時点を指すのか?

これは会社の出勤簿の作成方法によって変わりますが、1か月でまとめているのであればその月の終了日、1年間または1年度でまとめているのであればその年またはその年度の終了日ということになります。

タイムカードの保存期間

タイムカードの保存期間についても、同様に、労働基準法第109条の「賃金その他労働関係に関する重要な書類」に該当し、保存期間は3年間、そして起算日は労働基準法施行規則第5号に基づき、「完結の日」となります。

この点については、行政通達「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準について」(平13.4.6基発第339号)による解釈も出ています。

労働基準法第109条において、「その他労働関係に関する重要な書類」について保存義務を課しており、始業・終業時刻など労働時間に記録に関する書類も同条にいう「その他労働関係に関する重要な書類」に該当するものであること。それに該当する労働時間に関係する書類としては、使用者が自ら始業・終業時刻を記録したもの、タイムカード等の記録、残業命令書及びその報告書並びに労働者が自ら労働時間を記録した報告書などがあること。

なお、保存期間である3年の起算点は、それらの書類毎に最後の記載がなされた日であること。

なお、いずれの書類も法的根拠のある書類であり、作成・保存義務があるわけですが、特に、人事労務に関する法定3帳簿と言われている「労働者名簿」、「賃金台帳」、「出勤簿」は要注意です。

賃金台帳は給与計算ソフトを使っていれば自動的に出力できますし、出勤簿は休暇・休業関係の処理をする上で必ず必要になってくるため、大半の会社では法令を意識していなくても作成されているのですが、労働者名簿については社員一覧がある程度という状態だったりします。

もし、あなたの会社で労働者名簿を作成していないのであれば、それほど難しくないですし、法定3帳簿は調査で必ず確認されるものであるため、以下の記事を参考に至急作成してください。

労働者名簿の記載事項と保存期間(様式プレゼント!)
労働者名簿とは法律により作成が義務づけられている法定帳簿です。違反した場合は、30万円以下の罰金です。今回は労働者名簿の対象、必須の記載事項などを解説し、最後に様式もプレゼントします!

まとめ

いかがでしたでしょうか?

今回は、すべての業種に共通する「人事労務に関係する書類の保存期間」を解説しましたが、起算日の考え方など理解できましたか?

大事なことは、必ず一次情報である法令、そして行政が示す解釈を踏まえ、会社として自由に解釈できる部分はどこなのかを理解しておくことです。

なお、今回は法令による最低限の保存期間を解説しましたが、望ましいのはそれよりも若干長めに保存しておくことです(個人番号は除く)。

また、助成金を受けた場合は、要領などで関係書類の保存期間が別途定められている場合があるため、注意しておきましょう。

人事・労務に関係する書類の保存期間を根拠法を含めて解説!
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この記事を書いた人


安部敏志

あべ社労士事務所代表・社会保険労務士

従来の顧問契約とは異なり、中小企業の人事労務担当者の育成を主要業務とする。専門記事の執筆やセミナー・社内研修の講師にも対応。

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