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未払い残業代が32億円! でも非現実的な数字とは言えない理由(計算例あり)

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週刊ダイヤモンド12月20日号に「労基署がやってくる!」という特集がありました。

読んでいて懐かしい部分もありましたので、今回は以下の2点について取り上げます。

  • 未払い残業代として32億円というのはありえるのか?
  • 労働基準監督署はどこまで支援してくれるのか?

未払い残業代32億円はありえるのか?

特集では、上場企業のうち従業員が3,000人以上いる733社を含む743社にアンケートを実施しています。

その中では、2009年以降に臨検監督を受けた企業の割合(76%が臨検監督を受けている)、是正勧告を受けた企業の割合(57%)など、興味深いデータが示されています。

しかし、特に注目すべきなのは、実名入りで紹介されている大和ハウス工業の事例です。

残業代が未払いであるということで支払うように命じられているわけですが、その額は32億円!

公式サイトによると、平成26年4月1日現在で従業員数は14,380名。

これだけの組織だと、当然しっかりとした人事部を持ち、人事労務管理のプロであるはずの社会保険労務士も顧問としてついていたはずですけど・・・

それにも関わらず、32億円支払うことになったわけです。

この特集では、「労働基準監督署は実はとっても怖い存在なのである」とまとめられていますが、私はそれよりも、こんな大企業でしっかりした組織・人事部があっても、法令に沿った時間管理ができていないという事実に驚きました。

何と言っても32億円ですから。

といっても、この数字はそれほど非現実的な数字ではありません。

未払い残業代を単純計算してみた結果は86億円・・・

32億円なんて現実的に考えられない数字ですが、実はそれほど驚く数字ではありません。

ということで単純化した計算をしてみます。

まず、会社が、時給1,000円の人が行った1時間の残業代を支払わなかったとします。時間外労働に対する支払いは1.25倍になりますから、1日1,250円の未払いがあることになります。

月間20日、年間240日として計算し、残業代請求の時効は2年間になるため、1,250×240日×2年間=60万円です。

つまり、時給1,000円の人の一日1時間の残業代を放置した場合、企業側から見ると60万円得したことになります。もちろん、従業員から見ると60万円損したことになります。

そして、この事例の企業の場合、従業員数は14,380名です。もちろん残業代の支払い対象ではない管理監督者なども含んでいるとは思います。

ちなみに管理職と管理監督者については誤解が多いので以下の記事を参考にしてください。

関連:残業代の対象になる管理職とならない管理職を法令・裁判例で解説!

先程の計算に戻ると、1人60万円の未払い × 14,380人 = 86億円。。。

つまり、この事例の企業の場合、従業員全員が時給1,000円、全員の1日1時間の残業代を放置していたと仮定すると、86億円の未払い残業代があることになります。

あくまで仮定の計算ですが、むしろ32億円で済んでよかったのかもしれません。

労働基準監督署はどこまで支援してくれるのか?

特集号の拡大版として、労働基準監督官を描いた漫画『ダンダリン』の原作者である田島隆氏と現役監督官の「覆面座談会」が行われています。

現役監督官も30代から50代と幅広い年代の方が集まっており内容に厚みがある印象です。

私自身、過去に働いていた職場でもあるので、ここで語られている内容を見ると、昔を思い出します。

労働問題=大人のけんか

座談会の内容を引用しますが、これは本当に多い相談です。

自分ではやりたくない、できない、代行してほしい、そんなスタンスの人は多くいます。

自分自身の権利を勝ち取るという意思は大事です。実際に頑張っているからサポートも得られると思いませんか?

監督官が労働問題解決の代行をやってくれるという他人任せでは、自分が求める結果は得られません。だから、労働者に闘う意思があるならばサポートします。

ある若い労働者がさぼりのぬれぎぬを着せられて給料を払ってもらえないから助けてくれと相談に来たとき、使用者に誤解があるならもう一度自分で説明に行ってはどうかといろいろアドバイスしました。彼は最初こそ怖がっていましたが、自力で給料を受け取ることができました。

また、座談会の中では、法律は武器になるという発言もありますが、これはまさしくそのとおりです。

大人ですから可能な限り喧嘩は避けるべきですが、実際に喧嘩しなければならないときには、絶対に勝つことが必要です。

特に労働問題など人の感情が関係する場合、感情論を廃して法律を駆使するというのは重要です。

最後には「出るところに出るぞ!」というのが決め手になりますし。

私も、20代に同じような体験をしました。アルバイトをしていた運転代行会社で無断欠勤扱いされて給料をもらえず、即解雇された。専務の許可をもらって休んだのですが、彼が社長に言い忘れていたんです。

労基署の監督官に泣き付いたら、「捜査は何カ月もかかるかもしれないから、自分でやってみては」と。助言通りに労基署に相談したことにも触れた内容証明を送ったら、社長から電話がかかってきて「金払っちゃる。労基署にまで駆け込んで怖いやつだ」と白旗を揚げた。これが大人のけんかだと知りました。

法律は武器になる。そう思って私は法律家の道へ進み、行政書士になりました。自分で声を上げた上で労基署、労働組合、弁護士といった専門家に手伝ってもらうというのが本来のスタンスなんだと思います。

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