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休業手当の定義・支給基準等の基礎知識、30万円以下の罰則付

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休業手当とは?

休業手当とは、労働基準法第26条に基づき、使用者の責任により労働者が休業した場合に、労働者に支払わなければならない手当です。

休業手当の額は、平均賃金の100分の60以上、つまり6割以上です。

労働基準法第26条(休業手当)
使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中、当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない。

使用者の責に帰すべき事由

使用者の責に帰すべき事由とは、裁判例、学説上ともに以下のように考えられています。(実務コンメンタール労働基準法・労働契約法 p164)。

  • 使用者の故意、過失または信義則上これと同視すべきものよりも広く、
  • 不可抗力によるものは含まれない
ノース・ウェスト航空事件(最高裁第2小法廷 昭和62年7月17日判決)
「使用者の責に帰すべき事由」とは、取引における一般原則たる過失責任主義とは異なる観点をも踏まえた概念というべきであって、民法第536条第2項の「債権者の責に帰すべき事由」よりも広く、使用者側に起因する経営、管理上の障害を含むものと解するのが相当である。

わかりやすく整理すると、労働者を就業させられない場合、以下の2つがありえます(労働者の責に帰すべき事由は別として)。

  • 使用者の責に帰すべき事由の場合:休業手当の支払いが必要
  • 不可抗力の場合:休業手当の支払いは不要

問題は、どんなときに不可抗力と認められるのか、そして、どんなときに使用者の責に帰すべき事由と判断されるのかという点です。

不可抗力による場合

  • 原因が事業の外部より発生した事故
  • 使用者が通常の経営者として最大限の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故

不可抗力の例として、わかりやすいのが地震等の自然災害です。

天災地変等は不可抗力であり、使用者の責に帰すべき事由に当たらず、使用者に休業手当の支給義務は発生しません。

実際、厚生労働省が発出した「東日本大震災に伴う労働基準法等に関するQ&A(平成23年4月27日版)」では、

  • 今回の地震で、事業場の施設・設備が直接的な被害を受け、その結果、労働者を休業させる場合は、休業の原因が事業主の関与の範囲外のものであり、事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故に該当すると考えられるので、原則として使用者の責めに帰すべき事由による休業には該当しないと考えられる
  • また、計画停電が実施され、停電の時間中を休業とする場合も、原則として使用者の責めに帰すべき事由による休業には該当しない

という解釈を示しました。

使用者の責に帰すべき事由の場合

  • 使用者の故意・過失による場合
  • 経営者として不可抗力を主張し得ないすべての場合

「使用者の責に帰すべき事由」は、前述のとおり広く解釈される、具体的には「経営者として不可抗力を主張し得ないすべての場合」が含まれるという点に要注意です。

先程「東日本大震災に伴う労働基準法等に関するQ&A(平成23年4月27日版)」を例に示しましたが、地震の影響による休業であればすべて不可抗力が認められるわけではなく、以下の解釈も併せて示されていました。

  • 地震により事業場の施設設備は直接的な被害を受けていない事業場には、原則として「使用者の責に帰すべき休業」に該当し、また、計画停電の時間帯以外の時間における休業も同様

つまり、直接的な被害がなければ不可抗力とは言えないというのが原則的な考え方です。

ただし、東日本大震災のような甚大な影響があった災害の場合、直接的な被害がなくても、主要な取引先が影響を受けたり、輸送経路の遮断といった事態もありました。

そのため、取引先への依存の程度、輸送経路の状況、他の代替手段の可能性等、使用者としての休業回避のための具体的努力等を総合的に勘案し、「天災地変等の不可抗力」に相当すると判断される場合には休業手当の支払義務はない、とされていました。

休業期間とは

休業手当は、使用者の責に帰すべき事由により、労働者が休業する期間(休業期間)に支払われるものであり、休業期間とは労働義務のある日に休業させるものです。

就業規則や労働契約により休日と定められている日はそもそも労働義務のない日であるため、休業手当を支給する義務はありません(昭24.3.22 基収第4077号)。

休業手当の不払いによる罰則

労働基準法第26条に基づく休業手当を支払わない使用者に対しては、労働基準法第120条第1号により、30万円以下の罰金という罰則付きの規定になっているためご注意ください。

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