賞与計算のポイントは所得税と社会保険!【29年度対応の計算例付き】

こんにちは。福岡の社労士・安部敏志です。

最近は給与計算ソフトに任せっきりで、給与計算と賞与計算の違いを正確に理解していないまま実務を行っている方もいるようです。

もちろんソフトに任せて事務を効率化することは良いことですが、基本を知っておくことも大事です。

今回は、賞与計算と給与計算の違い、特に社会保険料や所得税の計算で異なる2つのポイントについて、実際に計算例を示しながら丁寧に解説していきます。

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賞与計算のポイントは2つ

まず、賞与とはどのようなものか、賃金・給与とどう違うのかという点については、以下の記事で詳しく解説していますが、会社には賞与をそもそも支給する義務はなく、支給時期、支給対象、支給時期なども、会社は自由に決めることができます。

公平性というのは重要なことですが、業績評価によっては、Aさんには支給する、でもBさんには支給しないというのも構わないわけです。

賞与とは? 人事が知っておくべき賞与の法的意味・メリット・デメリット
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それでは、実際に賞与計算の方法について解説していきます。

基本的な流れは給与計算と変わりません。賞与の計算でも、社会保険料、雇用保険料、所得税を控除していきます。

ただし、賞与計算と給与計算では、以下の部分に違いがあります。なお、住民税を特別徴収で納付する場合、住民税は毎月の給与から控除し、賞与からは控除しません。

  • 社会保険料:給与は「標準報酬月額」により決定、賞与は「標準賞与額」により決定
  • 雇用保険料:給与と賞与で同じ計算方法
  • 所得税:給与は「月額表」により算出、賞与は「賞与用の税率表」により算出

賞与における社会保険料の計算

社会保険料とは、狭義の社会保険、すなわち健康保険料(介護保険料)・厚生年金保険料のことを指しますが、社会保険上、賞与は以下のように扱われます。

労働の対償として受ける報酬のうち、3か月を超える期間ごとに支払われるもの

賞与、期末手当、決算手当など名称は異なっていても、上の定義に該当すれば、一体の賞与として扱う必要があります。

なお、賞与を支給したときは、支給日から5日以内に「被保険者賞与支払届」を年金事務所、健康保険組合、厚生年金基金に提出しなければならないことに注意してください。

賞与支払届の書き方については以下の記事で記入例を示して解説していますのでご参考ください。

賞与支払届の書き方を詳細解説(記入例つき)
今回は、賞与を支給したときの手続き、意外と記入間違いの多い賞与支払届の書き方について記入例を用いながら解説します。

標準賞与額

それでは、社会保険料の計算方法を解説していきます。

社会保険料は、以下の計算式により算出されます。

標準賞与額 × 保険料率

標準賞与額というのは、社員に支給した賞与額の1,000円未満を切り捨てた額です。

例えば、Aさんへの賞与額が850,500円であれば、標準賞与額は850,000円になります。「被保険者賞与支払届」では社員ごとに記入していきます。

標準賞与額の上限

ただし、標準賞与額には以下のように上限があります。

なお、健康保険の標準賞与額について、以前は540万円でしたが、平成28年度(平成28年4月)より573万円に引き上げられていますのでご注意ください。

  • 健康保険は年度(4/1〜3/31)の累計額で573万円まで
  • 厚生年金保険は、1か月の支給総額で150万円まで

そのため、以下の図のようになります。

calculation-of-bonus-social-insurance-h28

社会保険料の控除

標準賞与額に、健康保険料率、厚生年金保険料率をそれぞれ乗じることで、社会保険料が算出されます。

ただし、介護保険の第2号被保険者については、健康保険料の上乗せとして、以下の計算式による介護保険料も必要になるのでご注意ください。

健康保険の標準賞与額 × 介護保険料率

なお、実際に賞与計算をするときは、社会保険料の額を見越した上で控除し、支給することになりますが、保険料は被保険者と事業主で折半(2分の1)になるので全額を控除しないようにご注意ください。

賞与における所得税の計算

次に、所得税の計算方法を解説します。

賞与の所得税は、支給額に税率を乗じて計算します。

この税率を知るために用いるのが「賞与用の税率表(正式名称は、賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表)」です。

給与計算の際には「税額」、賞与計算の際には「税率」を求めるわけです。

所得税の税率の求め方

賞与用の税率表の見方ですが、これは前月の給与額から社会保険料を控除した金額、そして扶養親族数から、税率が決まります。前月の給与額という点は要注意です。

賞与における所得税の計算は理解しにくいところなので、以下の例を用いて実際に計算しながら解説していきます。

  • 40歳未満(つまり介護保険料なし)
  • 福岡の会社勤務
  • 扶養親族1名
  • 賞与額:450,000円
  • 前月の給与額:300,000円

まず、賞与用の税率表を確認するために、前月の給与額から、各種の社会保険料を確認してきます。

といっても実務的には既に支給している給与となりますので、各種の社会保険料はすでに算出されているはずです。

健康保険料の算出

平成29年度の保険料額表を見ると、給与額300,000円の場合、等級は22、福岡県の場合は保険料率が10.19%なので、以下の額となります。

300,000 × 10.19% × 1/2(事業主との折半) = 15,285円

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厚生年金保険料の算出

次に、厚生年金保険料ですが、先程と同じ平成29年度の保険料額表を見ると、保険料率が18.182%なので、以下の額となります。

300,000 × 18.182% × 1/2(事業主との折半) = 27,273円

雇用保険料の算出

最後に、雇用保険料ですが、平成29年度の従業員負担率は28年度から引き下げられ、0.3%(事業主は0.6)なので、以下の額となります。

300,000 × 0.3% = 900円

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賞与用の税率表の確認

これで賞与用の税率表を利用する準備が整いました。

上で算出した金額を用いて、前月の給与額から社会保険料を控除した金額を計算します。

前月の給与額300,000円 – (健康保険料15,285円 + 厚生年金保険料27,273円 + 雇用保険料900円) = 256,542円

この金額、そして扶養親族の人数をもとに、賞与用の税率表を見ると、扶養親族1人で、前月の社会保険料等控除後の給与等の金額では、243千円以上282千円未満のなるため、賞与の金額に乗ずべき率は4.084%であることがわかります。

賞与に対する源泉徴収税額の算出率H29

賞与の計算例

最後に、まとめとして、賞与額の実際の計算例を示しておきます。

今回は、賞与額を450,000円とし、前月の給与額は先程所得税の例でも用いた300,000円とします。

この場合、社会保険料は以下の金額となり、これら3つを賞与額から控除します。

  • 健康保険料:22,927円
  • 厚生年金保険料:40,909円
  • 雇用保険料:1,350円

賞与額450,000円 – (健康保険料22,927円 + 厚生年金保険料40,909円 + 雇用保険料1,350円) = 384,814円

そして、先程確認したとおり、所得税の賞与用の税率表は4.084%ですので、所得税は以下の金額となります。

384,814円 × 税率4.084% = 15,715円

所得税額が15,715円であることがわかりましたので、社会保険料を控除した額から所得税額を引いた以下の額が支給額、つまり社員の手取額となります。

384,814円 – 15,715円 = 369,099円

まとめ

いかがでしたでしょうか?

難しいわけではないのですが、結構手順に慣れるまで面倒だと感じませんか?

社会保険料率や雇用保険率は毎年のように変わりますし、手計算はもちろん、エクセルでも保険料率や計算式を間違えているとアウトです。

賞与計算の面倒な手順を知ると、とてもじゃないですが、給与計算ソフトなしに業務は行えなくなります。金額を間違えたら大問題ですし、だからといって1人1人手計算を行って検算するのは実務上不可能です。

そういったことで、よくオススメの給与計算ソフトを教えて欲しいと聞かれます。

最近、人気急上昇の給与計算ソフトと言えば、以下の2つになりますが、当事務所のクライアントの担当者に、利用してみた感想を聞いてみると、給与計算の仕組みをあまり考えずに利用できるということから、給与計算ソフトfreeeの方が好評のようです。

クラウドサービスの場合、出張時など離れた場所でも利用できますし、ソフトのアップデートも不要で、常に最新のサービスを利用でき、とても便利になったと喜んでいます。

どちらのサービスも無料で利用を開始できるため、まずは試しに登録してみてはいかがでしょうか?

なお、意外と誤解や混同の多い社会保険・労働保険に関する基礎知識について以下の記事で解説しています。この機会に改めてご確認ください。

社会保険・労働保険の基礎知識:種類・加入条件などを詳細解説!
社会保険・労働保険の基礎知識として、社会保険の定義・種類・加入条件などを詳細に解説します。特に加入条件の部分はよく質問を受けますので念のため確認しておきましょう。
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この記事を書いた人


安部敏志

あべ社労士事務所代表・社会保険労務士

中小企業の人事労務担当者の育成を中心に業務展開。専門記事の執筆やセミナー・社内研修の講師業も実施。

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