賞与・ボーナスの基礎知識・人事労務の面から見たメリット・デメリット

こんにちは。独立して賞与がなくなってしまった福岡の社労士・安部敏志です。

今年も残り1か月とちょっとですが、冬と言えば賞与(ボーナス)の季節ですね。人事労務担当者にとっては年末調整の時期なので恐怖の時期かもしれませんが(^0^)

今回は、賞与・ボーナスの基礎知識、人事労務の面から見たメリット・デメリットについて解説します。

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賞与・ボーナスとは

まず、賞与(ボーナス)とは何かという点から解説していきますが、その前に、そもそも賞与は、賃金と異なり、法律上支給が強制されているわけではありません。つまり、会社として不要と考えるなら、賞与を支給する義務はないということです。

そのため、賞与の定義は法令そのものには規定されていませんが、労働基準法が制定された際の施行通達で示されています。制定時の施行通達って歴史を感じますね(^0^)

賞与とは、定期又は臨時に、原則として労働者の勤務成績に応じて支給されるものであつて、その支給額が予め確定されていないものを云ふこと。定期的に支給され、且その支給額が確定しているものは、名称の如何にかかわらず、これを賞与とはみなさないこと。(昭和22年9月13日付け発基17号)*一部文語体を修正

つまり、労働基準法上、定義されているのは「臨時の賃金等」であり、これに該当するものは調整手当などの○○手当であっても賞与であっても、扱いは同じであるということです。

賃金と賞与で大きく異なる点については以下の図のとおりです。

difference-wage-bonus

会社には賞与の支給義務はありませんが、賞与を支給するのであれば就業規則への記載義務が生じるという点は要注意です。この点については後述します。

なお、賃金は、労働基準法第24条に基づき、以下の原則により支払わなければなりません。いわゆる「賃金支払い5原則」というものです。

  1. 通貨で
  2. 直接
  3. 全額を
  4. 毎月1回以上
  5. 一定期日に

決算賞与

併せて、決算賞与についても補足しておきます。

先程書いたとおり、賞与の支給時期は、通常、夏(6月)と冬(12月)です。それに加えて、決算月(最も多いのは3月)に支給される賞与、これが決算賞与です。

会社の業績が良い場合、年2回のボーナスに加えて、決算賞与として合計3回のボーナスが支給されるわけです。羨ましいですね(^0^)

賞与の歴史

また、賞与の歴史についても触れておきます。

なぜ賞与の支給時期が夏と冬になったのかよくわかります。それに生活保障的な「一時金」としての性格を帯びていったという点は、日本人に未だに根深く浸透している賃金の生活給思想ともリンクするところでなかなか興味深いところです。

日本では古くは江戸時代に商人がお盆と年末に奉公人に配った「仕着」が由来といわれている。

賞与としての最古の記録は1876年(明治9年)の三菱商会の例である。

当初は欧米のシステムと大差のないシステムであったが、第二次世界大戦敗戦後のインフレーションで労働運動が高揚し、生活のための出費がかさむ夏と冬に生活保障的な「一時金」としての性格を帯びるようになり、1回につき月給の0.5か月分-3か月分が支払われるようになった。

これは多くても0.5-1か月分といわれている欧米の賞与に比べると特異であると言える。

(from Wikipedia)

参考

「一時金」の意味

この「一時金」という用語が意味する内容は、正確に理解しておく必要があります。

「一時金」というのは、労働者(労働組合)からみた場合、組合員の生活に必要不可欠な「賃金」の一部であるということです。

つまり、会社からの「恩恵」ではなく、組合員の「権利」であるという意味で使われます。

この点は退職金の扱いでもよく争点になるのですが、「恩恵」であれば減額もあるし不支給もありえる一方、「権利」であれば減額や不支給となると権利を侵害することになってしまいます。

最近の経営者やサラリーマンから見ると、賞与・ボーナスは恩恵的なものというイメージがあるかもしれませんが、高年齢世代の人にとっては権利と思っている方が多いわけです。

当事務所では人事労務管理の担当者に指導や支援をするとき、必ず目的を明確にすることを求めていますが、賞与の支給も同様です。

恩恵・功労的な報酬という位置付けなのか、それとも一時金なのか、明確に就業規則や賃金規程に定めることで、同床異夢を防ぐことが大事です。

賞与と就業規則

賞与については、労働基準法令において臨時の賃金等と扱われており、就業規則の相対的必要記載事項、つまり、制度があるのであれば必ず記載しなければならない事項となるため要注意です。

この点については、以下の記事で解説していますのでご参考下さい。

本当は怖い就業規則! よくある間違い・落とし穴を徹底解説!
人を雇っている会社のルールブックとも言える就業規則について、中小企業でよくある間違い、その落とし穴について解説します。「就業規則の作成は怖くない」「簡単にできる」と書く素人がいますが、実際に裁判になってからでは遅いのです。

ただし、賞与の性格上、会社の業績によって変動がありますし、業績によっては不支給となる場合もありえます。

そのため、支給額を規定することまでは求められていませんが、少なくとも以下の項目は就業規則に規定しておく必要があります。

  • 支給条件
  • 支給時期

ここで知っておいていただきたいのは、支給時期も会社が自由に決めることができるということです。多くの会社では夏と冬に賞与がありますが、別に春や秋でも良いわけです。

なお、厚生労働省が公開しているモデル就業規則では以下のように規定されています。

bonus-regulations

ただし、一つの例として参考にするのは良いのですが、この規定をそのまま用いてしまうと、会社側として悔しいことが起こるかもしれません。。。

ここから先は当事務所のクライアントにのみお伝えするとして詳細は割愛しますが、ヒントは権利の確定と減額支給です。会社が自由に決めることができる部分は色々な要素を加味して決めましょう。

賞与と労働条件

また、雇用するときには、賞与の有無についてあらかじめ明示することが労働基準法第15条で求められています。

いわゆる労働条件の明示義務というものですが、先程の就業規則と同じく、制度があるのであれば必ず明示しなければならない事項です。

労働条件の明示については以下の記事で詳しく解説していますのでご参考ください。

なお、正社員の場合は書面での明示まで求められていませんが、パートの場合は書面での明示が義務なのでその点もご注意ください。

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賞与の計算方法

最近は、様々な給与計算ソフトがありますが、ソフトに任せっきりで、給与と賞与の計算方法の違いを正確に理解されていない人事担当者もいるようです。

ただ、これはかなり危険です。実際、労務リスクに関する調査をご依頼されることがありますが、給与計算ソフトを使っていても大半の会社が間違えています。

それは計算方法をきちんと理解していないため、ソフトの設定や入力で間違えているわけです。

何事も基本が大事です。以下の記事で、賞与の計算方法、社会保険料や所得税の計算方法、そして実例を扱って詳細に解説していますので、ご参考下さい。

賞与の計算方法・給与計算と異なる社会保険料と所得税に要注意!
今回は、賞与の計算方法、社会保険料や所得税の計算方法について、実際に例を用いて詳細に解説します。

また、賞与を支給したときは、支給日から5日以内に「被保険者賞与支払届」を年金事務所に提出しなければならないのでご注意ください。

以下の記事では、記入例を用いて、詳細に書き方を解説していますのでご参考下さい。

賞与支払届の書き方を詳細解説(記入例つき)
今回は、賞与を支給したときの手続き、意外と記入間違いの多い賞与支払届の書き方について記入例を用いながら解説します。

賞与・ボーナスのメリット

賞与の支給により社員のモチベーションアップを狙うというのは誰でも思いつくことです。

しかし、実はそれ以上に、会社にとって賞与のメリットというのはあります。

人件費の変動に対応しやすい

会社にとって人件費の総額でのコントロールは欠かせません。

「業績が悪いため、来年の賞与は昨年の半分」など、賞与という仕組みは企業の利益配分としての性格が強いため、景気や業績の変動に応じて人件費のコントロールに好都合です。

賞与という人件費の「のりしろ」を大きくしておけば、いざというときに解雇をせずに人件費を削減することが可能です。

この人件費の「のりしろ」がなければ人件費の割合が大きくなりすぎ、最悪、解雇や倒産といったことにもなりかねません。

つまり、賞与の弾力性を活用することで、会社は経営の安定・雇用の安定を確保するわけです。

残業手当と退職金に影響しない

これは、意外と意識されていないのですが、賞与は休日出勤手当を含む残業手当や退職金の算定に用いる必要がありません。

法令でも、残業手当を計算する時間給の中に、賞与分は含めなくてよいことになっています。

つまり、残業手当の額を相対的に低く抑えることができるということです。

また、退職金についても、年金ではなく一時金の場合ですが、通常は、

退職直前の基本給 × 勤続年数 × 一定率

のような計算式となっています。給与連動型ではなく、ポイント制による支給も最近は増えてきていますが。

残業手当と同様に、年間の現金支給総額ではないため、退職金の支払いも相対的に抑制することができます。

ちなみに、2003年の制度改正によりメリットはなくなりましたが、以前は社会保険料に関するメリットもありました。

以前の社会保険料の算定基準は、標準報酬月額制というボーナスを含まない金額をベースにしていたのですが、制度改正により、ボーナスを含む総報酬制に変更されました。

そのため、毎月の賃金に比べてボーナスの比重を大きくすることで、会社と社員の社会保険料負担を低くすることができていたわけです。

毎月の賃金は平均並みだけど、賞与の支給額はすごい、という大企業が多かったのはこのためです。

賞与・ボーナスのデメリット

次に、賞与のデメリットについて解説します。賞与の支給によりモチベーションアップを狙うという人は重要なことを見逃しています。

既得権になりやすい

あなたは、はじめて賞与をもらったときのことを覚えていませんか?

私はよく覚えています。すごくラッキーな気分でした(^0^)

賃金は働いた分の対価として考えますが、賞与というのはご褒美的なものに感じます。

しかし、次第にもらうことに慣れていきます。これが既得権です。

経営者からすると、業績が苦しくても、わずかでも賞与を支払いたいと頑張って工面したりします。ただ、社員からすると、賞与の減額・不支給はモチベーションダウンにつながってしまいます。

業績の推移・賞与額の根拠をきちんと社員に示すことで、経営者としてわずかな額でも必死に工面したことを理解してもらうことはできますが、そもそも恩恵的なものであるにも関わらず、支給してモチベーションが下がるというのは経営者にとってはやりきれないものです。

退職時期が固まりやすい

もう一つの極めて実務的なデメリットが、退職が同一期間に固まってしまうという点です。

誰しも辞めるときには、もらえるものをすべてもらって辞めようと考えます。

退職の理由は様々なので仕方のない面もありますが、社員数が少ない、または代替要員の確保が困難な業務を行っている会社にとって、人員の変動が大きくなる時期があると、会社経営に大きく影響します。

そして、同時期に社員が退職してしまうと、採用活動にも影響が生じます。

本来なら採用を悩んでしまうような人材でも、数を埋めるために採用せざるを得ないという状況にもなりかねません。そうすると、また新たな問題の火種を抱えてしまうことになりかねません。

このデメリットを防ぐための有効な方法が就業規則の一工夫です。

なお、社員の満足度は高いから、我が社は大丈夫と安心するのは、経営上のリスク管理として甘いと言わざるを得ません。

現在、介護離職が問題になっていますが、会社に満足していても家族の事情などで退職することはあります。

そもそも、辞める辞めないは社員自身が決めることです。

だからこそ、経営者は、退職者が出てくることは仕方ないとしても、就業規則などの活用によって、退職時期を分散させるなどのリスクコントロールを行うことが重要です。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

率直に言って、経営というのは人件費との戦いとも言えます。

最近問題になっている非正規労働者の増加も、景気や業績の変動に柔軟性を持たせる「のりしろ」として活用しているのは事実です。

良い・悪いではなく、会社経営の現実的な面として、柔軟性を持たせるためのツールを多く持っておくことは必要なことであり、賞与についても一つの重要なツールとして、メリット・デメリットを勘案した上で活用したいところです。

なお、社員のモチベーションアップを考えるのであれば、非金銭的な報酬というのは効果の大きい方法です。以下の記事で解説していますのでご参考下さい。

社員のモチベーションを上げるための理論と実践・給料以外の報酬はこんなにある!
今回は、非金銭的な報酬、つまり給与や賞与に関連させずに社員のモチベーションを上げる実効性のある方法をご紹介します。

また、この記事を書く中で、みんなどれくらいの賞与をもらっているのだろうかと気になって政府の統計を調べてみたところ驚く結果となりましたので記事を書きました。

4人に1人が「賞与・ボーナスなし(0円)」という衝撃の統計結果!
行政の統計を調べてみたところ、4人に1人が「賞与・ボーナスなし」、つまり0円という衝撃の統計がありましたので紹介します。
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この記事を書いた人


安部敏志

あべ社労士事務所代表・社会保険労務士

国家公務員I種職員として労働基準法・労働安全衛生法等の立案や企業への徹底的な指導に従事した経験を武器に、退職後は逆に会社を守る立場として経営者・人事担当者からの人事労務管理に関するご相談に対応。

最近は記事の執筆やセミナー講師の依頼にも積極的に対応。仕事内容がわかりにくいとよく言われるので、業務内容・実績を紹介するページを作成しました!

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