労働相談は9年連続で100万件超・5年連続トップで「いじめ・嫌がらせ」

こんにちは。福岡の社労士・安部敏志です。

厚生労働省が、最新の数字となる平成28年度の総合労働相談件数を発表し、9年連続で100万件を超えています。

また、この労働相談の中で最も多い相談が「いじめ・嫌がらせ」、いわゆる「パワハラ」ですが、こちらも5年連続で1位、しかもダントツの数字になっています。

今回は、総合労働相談件数とその内訳についてわかりやすいグラフにまとめ、また個別労働紛争解決システムの概要、具体的な助言・指導の事例をご紹介します。

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平成28年度の労働相談件数と内容

まず、今回の発表内容のポイントをまとめると以下のとおりです。

  • 総合労働相談件数は113万741件(前年度から9.3%増)、9年連続で100万件を超え、高止まり
  • 民事上の個別労働紛争の相談件数では、「いじめ・嫌がらせ」が5年連続トップ
  • 第2位が自己都合退職、第3位が解雇、第4位が労働条件の引下げ、第5位が退職勧奨

念のため、使用されている用語を解説しておきます。

総合労働相談
あらゆる労働問題に関する相談にワンストップで対応するために国が運営している総合労働相談コーナー。都道府県労働局、各労働基準監督署内、駅近隣の建物など380か所に設置され、専門の相談員が対応。
民事上の個別労働紛争
労働条件その他労働関係に関する事項についての個々の労働者と事業主との間の紛争。労働基準法等の違反については除外。

それでは、発表内容をわかりやすくグラフにまとめましたのでご参照ください。

グラフの見方

  • PCの場合は、グラフ上にマウスカーソルを持っていってみてください。ラベルと数値がふわっと出て来ます。
  • スマホやタブレットの場合は、グラフ上でタッチしてみてください。ラベルと数値が出て来ます。

今回の労働相談の内容として特徴的と感じた点は以下の部分です。

  • 他の相談内容に比べて、いじめ・嫌がらせ、いわゆるパワハラは圧倒的に上昇
  • 解雇よりも自己都合退職が増えており、今の雇用状況が反映されている

個別労働紛争とは

個別労働紛争とは、労働者個人と使用者との間の労働関係上の紛争のことです。これに対して、労働組合が関係する場合は集団的労使紛争と言います。

今回発表された労働相談というのは、労働者個人からの相談(82.5%)、事業主からの相談(10.0%)であり、個別労働紛争に該当するものです。

個別労働紛争解決制度

個別労働紛争を解決するための制度として、平成13年に「個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律」が施行され、民事上の相談にも国は対応しています。

きちんとした会社であれば経営者や人事担当者が個別の労働紛争について調整を行うわけですが、人事労務管理の個別化、雇用形態の多様化などもあって、個々の労働者と事業主との間の紛争が増えてきたために、このような解決制度が構築されています。

流れとしては以下の図のようになります。

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個別労働紛争解決制度の対象

個別労働紛争の最終的な解決手段としては裁判となるわけですが、これには時間と費用がかかります。

この紛争解決制度の場合、利用料は無料です。

そのため労働関係の問題が生じた場合、労働者は利用しやすいわけです。

もちろん、相談内容が労働基準法等の法違反に該当する場合、労働基準監督署による行政指導が行われるわけですが、民事上の個別労働紛争についてはあくまで紛争当事者に対して話し合いによる解決を促すものです。

対象となる紛争の範囲は「労働条件その他労働関係に関する事項」となっており、具体的には以下のようなものです。

  • 解雇、雇止め、配置転換・出向、昇進・昇格、労働条件の不利益変更などの労働条件に関する紛争
  • いじめ・嫌がらせなどの職場環境に関する紛争
  • 会社分割による労働契約の承継、同業他社への就業禁止などの労働契約に関する紛争
  • 募集・採用に関する紛争
  • その他、退職に伴う研修費用の返還、営業車など会社の所有物の破損についての損害賠償をめぐる紛争

で、今回の発表にもあるとおり、最も多いのが「いじめ・嫌がらせ」、いわゆる「パワハラ」になるわけです。

「仕事は嫌いではないけど会社は嫌い」という言葉をよく聞きますが、人間関係というのは難しいものです。ましてや上司・部下という立場が異なると、言葉は同じでも、そのニュアンスや表情によって受け取り方がかなり変わります。

パワハラの当事者の方は「そんなつもりじゃなかった」とよく言いますが、結局は日頃の人間関係と人柄によるということです。

セクハラ問題でもこの種の議論はよくありましたが、正しい、正しくない、の問題というよりも、日頃からの人間関係に落ち着いてしまいます。

パワハラに関する助言・指導、あっせんの事例

発表資料の中で取り上げられていたパワハラに関する助言・指導の事例、あっせんの事例をご紹介します。

なお、発表資料の中には、パワハラ以外で、解雇、自己都合退職、労働条件の引下げに関する助言・指導の事例、雇止め、退職勧奨に関するあっせんの事例も紹介されているので、ご参考ください。

パワハラ(いじめ・嫌がらせ)に係る助言・指導
【事案の概要】

申出人は、正社員として勤務しているが、上司から「ぼけ、アホ」、「のろま」、「お前は使い物にならん」等の暴言を日常的に受けていることに加え、後ろから腰を蹴られ転倒するという暴行を受けた。上司は、周りに気付かれないようにこのような行為をしているため、会社に言ってもどうしようもない。
職場環境の改善を求め、その上司とは別の部署に異動したいとして、助言・指導を申し出たもの。

【助言・指導の内容・結果】

  • 事業主に対し、上司の行為はパワーハラスメントの提言で示されている類型(身体的な攻撃及び精神的な攻撃)に該当する可能性があり、会社の責任が問われる可能性があることから、パワーハラスメントの有無について調査し必要な対応を行うこと、上司とは別の部署に異動したいという申出人の意向を踏まえた話し合いなどの対応をとることについて助言した。
  • 助言に基づき、申出人の意向のとおり、申出人はその上司と別の部署へ異動し、いじめ・嫌がらせを受けなくなった。また、社内でパワーハラスメントの有無について調査が進められることになった。
パワハラ(いじめ・嫌がらせ)に係るあっせん
【事案の概要】

申請人は、正社員として勤務していたが、同僚3名から食事代などをおごらされ、そのうちの1名からは、顔や腹などを殴るなどの暴力を受けた。管理者に相談したところ、同僚から一部金銭が返却されたが、同僚3名に対する処分はなかった。
また、その後に、異動先の上司から無視されるようになり、それをきっかけに精神状態が不調となり、体調も悪くなったことから、退職せざるを得なくなった。
会社の対応の不備について、60万円の慰謝料を求めたいとしてあっせんを申請した。

【助言・指導の内容・結果】

  • あっせん委員が双方の主張を聞いたところ、被申請人は、あっせん申請を受けて社内調査をした結果、申請人の申立内容は概ね事実であることが認められたので、早期に問題解決したいとの意向を示した。
  • あっせん委員は、被申請人に対し、裁判になった場合は、会社として安全配慮義務を果たしていないと判断される可能性が高いことを伝え、歩み寄りを促したところ、解決金として50万円を支払うことで合意が成立し、解決した。

なお、パワハラの定義、安全配慮義務については以下の記事で解説していますのでご参考ください。

パワハラの定義を見極める2つのポイントと具体例(図解あり)
パワハラの定義、パワハラに該当するかチェックする上で重要な6種類の行為とその事例について解説します。
安全配慮義務の基本と3つのチェックポイント
安全配慮義務とは何か、関連する判例・労働契約法の趣旨・内容、そして会社として安全配慮義務を遵守しているかチェックするための3つのポイントを解説します。

参考 「平成28年度個別労働紛争解決制度の施行状況」を公表します(厚生労働省)

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この記事を書いた人


安部敏志

あべ社労士事務所代表・社会保険労務士

中小企業の人事労務担当者の育成を中心に業務展開。専門記事の執筆やセミナー・社内研修の講師業も実施。

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