業務前後の着替えなどの準備時間は労働時間に該当する?

時間外労働の上限規制が始まりましたが、何が労働時間に該当する・しないかを理解しておくことは重要です。業務前後の着替えなどの準備時間が労働時間に該当するのかという点について解説します。

まず、労働時間の定義については以下の記事で解説していますが、ポイントは

  • 使用者の指揮命令下にある時間かどうか

これが大きな判断基準になります。

関連:労働時間とは? 残業時間の対策の前に労働時間の定義に要注意!

それでは、業務前後の着替えなどの準備時間は労働時間になるのでしょうか?

結論から言うと会社による義務として、その準備行為が必要なのかどうかという点により判断されることになります。

(1) 着替えは労働時間に該当するとした裁判例

有名な最高裁の判例(三菱重工長崎造船所事件)として始業時刻前・始業時刻後の作業服・保護具の着脱等に要した時間は労働時間に該当するというのがあります。

三菱重工長崎造船所事件
労働者が、就業を命じられた業務の準備行為等を事業所内において行うことを使用者から義務付けられ、又はこれを余儀なくされたときは、特段の事情、社会通念上必要と認められるものである限り、労働時間に該当する。

着替えは労働時間に該当すると誤解している専門家もいるようですが、この判決には、

  • 事業所内において行うことを使用者から義務付けられ、又はこれを余儀なくされたとき
  • 特段の事情、社会通念上必要と認められるものである限り

といった様々な条件が前提にあることに注意が必要です。

(2) 着替えは労働時間に該当しないとした裁判例

そして、着替えの時間だからといって、一律に労働時間に認められるわけではないとしたのが以下の判決です。

日野自動車工業事件(東京高裁・昭56.7判決、最高裁は昭59.10に原審判決を正当として維持)
  • 職場までの歩行や着替えは、作業開始に不可欠のものであるとしても、労働力提供のための準備行為であって、労働力の提供そのものではなく、特段の事情のない限り使用者の直接の支配下においてなされるわけではない。
  • これを一律に労働時間に含めることは使用者に不当の犠牲を強いることになって相当とはいい難く、結局これをも労働時間に含めるか否かは、就業規則にその定めがあればこれに従い、その定めがない場合には職場慣行によってこれを決するのが最も妥当である。

労働時間に含めるか否かは、就業規則にその定めがあればこれに従い、その定めがない場合には職場慣行によってこれを決するのが最も妥当 とされており、働き方のルールである就業規則の定め方はやはり重要です。

まとめ

業務がどのように始まり、どのように終わるのか、それは会社によって異なります。

三菱重工長崎造船所事件の判例では、

  • 労働時間に該当するか否かは、労働契約、就業規則、労働協約等の定めによって決められるものではなく、
  • 客観的に見て、労働者の行為が使用者から義務づけられたものといえるか否かなど、個別具体的に判断される

と示されていますが、これは実態と異なる労働契約や就業規則であれば、客観的に見るということであって、実態を踏まえた労働契約や就業規則であれば、日野自動車工業事件の判決のように、当然労働契約や就業規則の定めに基づいて判断されます

始業時刻・終業時刻の定めは、就業規則の絶対的必要記載事項ですが、単に単に9:00-18:00といった定めではなく、どの時間が業務に含まれるのか、含まれないのかを整理しておくことが重要です。

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