厚生労働省がマタハラで初めて事業場名を公表!今後の影響を予測!

マタハラ(マタニティハラスメント)という言葉はご存じですか?

2014年新語・流行語大賞の候補50語にも選出された言葉ですが、妊娠・出産に伴う精神的・肉体的な嫌がらせ行為のことです。

妊娠を理由とする解雇は、明確に違法です。

今回、厚生労働省は、妊娠を理由とする解雇を行い、度重なる指導・勧告に従わなかったとして、茨城県にある「医療法人医心会 牛久皮膚科医院」について、事業場名、代表者名、所在地とともに公表されました。

参考:厚生労働省発表:男女雇用機会均等法第30条に基づく公表について~初めての公表事案、妊娠を理由とする解雇~

あなたはこんな病院を応援しますか?

驚くべきことに、看護師など他の企業に比べても女性の多い職場である病院で、このようなマタハラ事案があったということです。

しかも、朝日新聞の記事によると、この院長は「妊婦はいらない。明日から来なくていい」と言い、厚生労働省からの指導に対しても「均等法を守るつもりは無い」と従わなかったとのことです。

妊娠理由に解雇した医院を初公表 院長「妊婦いらない」

妊娠を理由に女性職員を解雇し、是正勧告にも従わなかったとして、厚生労働省は4日、男女雇用機会均等法に基づき茨城県の医院名を公表した。公表制度は1999年からあったが、実際に公表するのは初めてだ。

厚労省が公表したのは、茨城県牛久市の医療法人「医心会」の牛久皮膚科医院(安良岡勇〈やすらおかいさむ〉院長)。今年2月、正職員だった20代前半の看護助手の女性が、院長に妊娠したことを告げたところ、院長は後日、「妊婦はいらない。明日から来なくていい」と述べ、解雇したという。

女性が茨城労働局に相談し、茨城労働局長や厚生労働相名による解雇の撤回を求める是正勧告を行ったが、院長は「均等法を守るつもりは無い」として従わなかったという。
朝日新聞デジタル 2015年9月5日

法律を守るつもりはないと明言する覚悟は大したものですが、この院長は何か勘違いしているのでしょう。

医療機関として地域に貢献しているという自負があるのかもしれませんが、いかに素晴らしいスポーツ選手でも、ルールを守らない選手を応援する人はいません。

どの組織でもそうですが、周囲からの応援がなければ、存続していくことはできません。

だからこそお客様を大事にし、そのお客様と最も接する機会の多い社員を大事にすることで、組織を存続させています。

今回の事案により、この病院を応援する方は減るどころかいなくなるでしょう。特に、病院のように地域に密着している事業では、不名誉な情報は瞬時にまわりますし、一生ついてまわります。

「牛久皮膚科医院? ああ、あのマタハラの院長の病院ね」と言われることになるでしょう。

取り戻せない不名誉と強烈な社会的制裁

インターネット社会、スマホの流通などにより、誰で過去の情報を検索できます。

一度でもこのような不名誉な公表をされてしまうと、永遠にこの情報は残ります。このサイトでもこのように掲載してますし。

The Huffington Postの記事「「妊婦は要らない。あしたから来なくていい」マタハラ事業者、初の実名公表」によると、「同医院は留守番電話で「院長の体調不良により休診しており、再開の目処は立っておりません。ご迷惑をお掛けしております」との音声を流しているとのことです。

ほとぼりが冷めるまでということかもしれませんが、この期間の収入は途絶えますし、看護師や事務の方など社員も再開のめどがなければ、他に移ってしまうでしょうし、これは病院自体の存続自体が危うそうです。

今後マタハラ事案の企業名公表は増加する!

日本労働組合総連合会(連合)の調査によると、マタハラという言葉自体の周知は進んでいるものの、周囲の意識の変化はほとんどないということです。

この公表制度は1999年よりあったものですが、今回、初の公表となったのは、記事にあるように、最高裁の判断、世論の後押しによるものです。

そして、今回、初公表がなされたことにより、今後行政としては全国的に同種の事案があれば発表していくという意志の現れでもあります。

今後、マタハラ事案を抱え、行政の指導に従わない企業は、公表されるということを理解しておくべきでしょう。

「マタハラ」抵触事業者の公表、改善進まない実態が背景に

厚労省が初の事業主の実名公表に踏み切るなど、厳しい姿勢で「マタハラ」対策にあたる背景には、マタハラについて認知度は高まる半面、改善はあまり進まない実態がある。

連合が先月、過去5年以内の在職時に妊娠した20~40代の女性654人を対象に行った調査では、マタハラという言葉を知っているかとの問いに、78%が「言葉も知っており、意味も理解している」と回答。「言葉も知っており、意味も少しだけ知っている」(15・6%)と合わせた認知度は93・6%で、昨年の調査(認知度62・3%)と比べ31・3ポイント上昇した。

一方、マタハラについて周囲の意識の変化を感じるかとの問いには、63・5%が「感じない」と回答。約3割が「自分もマタハラ被害にあった」とし、具体的な被害は、解雇や契約打ち切りが11・5%と最多だった。

連合の担当者は「最高裁が昨年、『妊娠や出産を理由とした降格は原則違法』とする初判断を示したことなどが、認知度の向上につながった。だが、管理職や現場の社員は、均等法を順守しなければ損害を被るという危機感を持つまでには至らず、意識が浸透しきっていない」と話している。
産経ニュース2015年9月4日

参考:男女雇用機会均等法第9条第3項

妊娠・出産等を理由とする解雇その他不利益取扱いは禁止、以下は不利益取扱いの例

  1. 解雇すること
  2. 期間を定めて雇用される者について、契約の更新をしないこと
  3. あらかじめ契約の更新回数の上限が明示されている場合に、当該回数を引き下げること
  4. 退職又は正社員をパートタイム労働者等の非正規社員とするような労働契約内容の変更の強要を行うこと
  5. 降格させること
  6. 就業環境を害すること
  7. 不利益な自宅待機を命ずること。
  8. 減給をし、又は賞与等において不利益な算定を行うこと
  9. 昇進・昇格の人事考課において不利益な評価を行うこと
  10. 不利益な配置の変更を行うこと
  11. 派遣労働者として就業する者について、派遣先が当該派遣労働者に係る労働者派遣の役務の提供を拒むこと

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この記事を書いた人


安部敏志

あべ社労士事務所代表・社会保険労務士

国家公務員I種職員として労働基準法・労働安全衛生法等の立案や企業への徹底的な指導に従事した経験を武器に、退職後は逆に会社を守る立場として経営者・人事担当者からの人事労務管理に関するご相談に対応。

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