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社労士のためのVSCode入門|就業規則をWordではなくMarkdownで書く理由

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就業規則の条の中で項を1つ追加したら、他の条の項の番号まで自動で変更された、コピー&ペーストをしたら、インデントや文字の大きさが崩れた・・・。

Wordで就業規則を直すたびに、内容ではなく体裁を整えることに時間を取られていないでしょうか?

その時間は、専門家としての仕事ではなく「作業」そのものです。

私は、そのような作業を排除し、とことん業務効率化を進めるために、就業規則や関連規程の作成をはじめ、業務の99%の場面で「VSCode(ブイエスコード)」というソフトを使っています。

開業社会保険労務士専門誌「SR」では、連載「生成AIだけじゃない! 基礎的な業務効率化ツール入門」として、VSCode、Git、GitHubの使い方を3回にわたって解説しました。拙著「一人社労士事務所のほどほど経営術」でも触れています。

参考:専門誌SRで「VSCodeとMarkdownで始める文書作成の効率化」に関して執筆

この記事では、社労士がVSCodeを使う理由と、VSCodeでできることの全体像、そして最初の3ステップを紹介します。

VSCodeとは

VSCode(Visual Studio Code)は、Microsoft社が無料で提供しているテキストエディタ(文字を入力・編集するためのソフト)です。WindowsでもMacでも使えます。

プログラマーの間では定番のツールですが、実は、就業規則のような長い文書を作成するのにも優れています。

社労士がVSCodeを使う3つの理由

1. 動作が軽く、長い就業規則でも快適

VSCodeは、Wordと比べて起動が速く、何十ページもある就業規則でも動作が重くなりません。複数のファイルを同時に開いて、見比べながら編集するのも簡単です。

2. 書式に振り回されず、内容に集中できる

VSCodeでは、文書を「テキスト(文字データ)」として書きます。Wordのように、条番号が勝手にずれたり、貼り付けた文章の書式が崩れたりすることがありません。

体裁を直す時間がなくなる分、条文の中身を考えることに時間を使えます。

3. 1つのソフトで、業務のほとんどが完結する

私は、就業規則や関連規程、顧問先からの相談への回答、雑誌の原稿、このブログの記事まで、ほぼすべての文書をVSCodeで書いています。

後ほど紹介するとおり、VSCodeで書いた文書は、PDFやWordへの変換、スライドの作成、図の作成など、さまざまな形に展開できます。ソフトを行き来する必要がないのは、一人社労士事務所にとって大きな利点です。

Markdownによる就業規則の書き方

VSCodeで文書を書くときに使うのが、「Markdown(マークダウン)」という書き方のルールです。

Markdownでは、行の先頭に「#」などの記号を付けるだけで、見出しや番号付きの項目を表現できます。例えば、就業規則の条文は以下のように書きます。

## 第2章 採用、異動等

### 第6条 試用期間

1. 労働者として新たに採用した者については、採用した日から3か月間を試用期間とする。
1. 前項について、会社が特に認めたときは、試用期間を短縮し、又は設けないことがある。
1. 試用期間は、勤続年数に通算する。

見出しの「#」の数が、章(##)・条(###)の階層を表しています。項の番号は、すべて「1.」と書いておけば、表示するときに「1、2、3」と自動で番号が振られます。そのため、途中に項を追加しても、番号を振り直す必要はありません。

私が就業規則を作るときに使っている記号は、「#」「##」「###」「1.」の4つだけです。覚えることは、本当にこれだけです。

VSCodeには、Markdownで書いた文書の仕上がりを横に並べて表示する「プレビュー」機能もあり、見た目を確認しながら書き進められます。

VSCodeでできること

ここからは、VSCodeとMarkdownで書いた文書を、実務でどう活用しているかを紹介します。やりたいことに合わせて、詳しく解説した記事をご覧ください。

やりたいこと使う機能・ツール
顧問先にWordで提出するPandoc
100人分の書類を一括で直す(画面操作)検索・置換+正規表現
100人分の書類を一括で直す(コマンド)sed
手続の流れを図にするMermaid
セミナー資料を作るMarp
Excelの表を取り込む表変換ツール
誤変換を減らすSKK
ファイルを保存・共有するNextCloud、Googleドライブ

顧問先への提出:PDF・Word

Markdownで作った文書を顧問先と共有するとき、私は普段、PDFに変換して送るか、GitHub(文書を保存・共有できるWebサービス)で共有しています。

ただ、顧問先からWordで求められることも少なくありません。その場合は、「Pandoc(パンドック)」という無料ツールを使えば、見出しや番号の構造を保ったまま、Wordファイルに一発で変換できます。

関連:MarkdownからWordに一発変換|Pandocの使い方を社労士がやさしく解説

100人分の書類を一括で直す

Markdownはテキストファイルなので、何十人分、何百人分の書類でも一括で修正できます。

コマンドを使わずに画面操作だけで済ませたい場合は、VSCodeの「検索・置換」機能を使います。正規表現という書き方を組み合わせると、「行の先頭だけ」「数字の部分だけ」といった細かい指定もできます。

関連:社労士のための正規表現入門|VSCodeで就業規則の条ずれ・表記揺れを一括チェック

もう一歩進んで、コマンドで一括処理したい場合は、sedが便利です。

関連:100人分の書類を一括修正|社労士のためのsed入門(行の挿入・削除)

図やスライドを作る

Markdownの中に簡単な記述をするだけで、手続の流れを示すフローチャートが描けます。

関連:Mermaidフローチャートの書き方|ループ・分岐・矢印の向き

研修やセミナーのスライドも、Markdownから作ることができます。

関連:Marpの見出し・本文を中央から上詰めに変更する方法

表を取り込む・誤変換を減らす・保存する

Markdownの唯一の弱点と言えるのが、表の作成です。ExcelやCSVの表は、変換ツールを使えば一瞬でMarkdownの表にできます。

関連:ExcelやCSVから一発でMarkdownの表に変換できるツール

長い文書を書くときの誤変換を減らす工夫や、ファイルの保存・共有の方法は、以下の記事で紹介しています。

関連:SKKで誤変換を減らす|社労士が6年手放せない日本語入力

関連:NextCloudでDropbox・OneDriveを卒業|エックスサーバーで作る自前クラウド

よく使う文章をスニペットで呼び出す

VSCodeには、「スニペット」という機能があります。

よく使う文章をあらかじめ登録しておき、数文字入力するだけで呼び出せる機能で、日本語入力の単語登録の「文章版」というイメージです。

例えば、以下のような文章を登録しておくと便利です。

  • 条文のひな形(「### 第○条 見出し」と本文の枠)
  • 顧問先への回答メールの書き出しや結び
  • 就業規則の附則(施行日の定め)

スニペットは、VSCodeのメニューから「ユーザースニペットの構成」を選び、「markdown.json」というファイルに登録します。以下は、「jo」と入力すると条文のひな形が出てくる例です。

{
  "条文のひな形": {
    "prefix": "jo",
    "body": [
      "### 第${1}条 ${2:見出し}",
      "",
      "${0}"
    ],
    "description": "就業規則の条文"
  }
}

なお、VSCodeは初期設定のままだと、Markdownではスニペットの候補が自動で表示されません。

私はこれに気づかず、スニペットの書き方が間違っているのだと思い込んで、かなりの時間を使ってしまいました。

自動で表示させたい場合は、VSCodeの設定ファイル(settings.json)に以下を追加します。

"[markdown]": {
  "editor.quickSuggestions": true,
  "editor.snippetSuggestions": "top"
}

生成AIとの相性も良いMarkdown

ChatGPTやClaudeなどの生成AIは、回答をMarkdown形式で返すことがほとんどです。そのため、AIが作った下書きを、そのままVSCodeに貼り付けて編集・保存できます。

Wordに貼り付けると見出しや箇条書きが崩れがちですが、Markdownなら構造を保ったまま扱えます。

生成AIを業務に取り入れたいと考えているなら、文書をMarkdownで扱えるようにしておくことが、その土台になります。

VSCodeを始める最初の3ステップ

いきなり就業規則のすべてをVSCodeに移す必要はありません。まずは、以下の3ステップから始めてみてください。

  1. VSCodeをインストールし、日本語化する
    • 公式サイトから無料でダウンロードできます。日本語化は、拡張機能「Japanese Language Pack」を入れるだけです
  2. 1つの文書をMarkdownで書き、プレビューで確認する
    • 短い文書など、小さなところから試すのがおすすめです
  3. PDFやWordに変換してみる
    • 顧問先に提出する形にできることを確かめれば、安心して使い始められます

インストールから、Markdownで就業規則を作成する手順、Git・GitHubによる文書の管理までは、前述の専門誌「SR」の連載で、画面付きで詳しく解説しています。

まとめ

VSCodeとMarkdownを使えば、Wordの体裁直しから解放され、文書の中身を考えることに時間を使えるようになります。

  • VSCodeは無料で、WindowsでもMacでも使える
  • 就業規則に必要なMarkdownの記号は4つだけ
  • PDF・Wordへの変換、一括修正、図やスライドの作成まで、1つのソフトで完結する
  • 生成AIを業務に取り入れる土台にもなる

まずは、短い文書を1つ、Markdownで書いてみるところから始めてみてください。

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