人事の仕事に求められる3つのポイントとバランス感覚
今回は、人事の仕事とは何か、人事の仕事内容と役割、経営者が担当者に人事を任せっきりにしてはいけない2つの理由について解説します。
人事の仕事とは?
まずよくある誤解として、人事の主な仕事 = 採用と考えている人が割といます。
人事コンサルタントという肩書きは、実際なんの資格もなく使用できます。
そのため、採用をメインに行っていたり、人事評価制度の構築を行っていたり、人によって様々なことを行っています。
私なりに人事の仕事を定義すると、
- 人事の仕事とは、会社にとって必要な人を採用し、働きやすい環境・働きがいのある場を提供した上で、社員の能力を開発し、会社の成長に貢献すること
どんな会社でもなんらかの形で必ず人が介在します。そのため、会社の業績はそこで働く人にかかっていると言っても過言ではありません。
人をどのように採用し、育成し、動かしていくか、人事の仕事は経営上重要なミッションを担っており、だからこそ会社の土台・骨格づくりを担う仕事とも言えるものです。
人事の仕事内容と役割
改めて先程のポイントを整理すると、人事の仕事内容と役割というのは、大きく分けると3つになります。
- 採用:会社が求める人を獲得する
- 労務管理:社員が働きやすいサービスや環境、働きがいのある場を提供する
- 教育:社員の能力を開発する、人材育成
先程の定義でも書きましたが、ゴールは必ず会社の成長への貢献です。
どんなに優秀な人を採用しても、働きやすい環境・働きがいのある場を提供しても、社員教育をたくさん行っても、会社の成長に貢献しなければ、それはすべて失敗とみなすべきです。
とは言っても、いくら人事担当者が頑張ったところで、採用や教育というのはすべて成功するとは限りません。どんなに頑張っても無名の中小企業に来てくれる人というのは限定されるのが現実ですし、いくら教育を頑張っても、例えばみんなが東大に入れるわけではありません。
つまり、人事担当者が自ら頑張った分だけ成果が出てくるのは労務管理の部分であり、この労務管理が会社の土台・骨格づくりに大きく影響することになります。
なお、労務管理については以下の記事で詳細に解説していますのでご参考ください。
http://worklifefun.net/reasons-for-labor-management/
人事に対する経営者のバランス感覚
このように、人事に求められる役割というのは会社の土台・骨格づくりに値するわけですが、50名未満の規模の場合、総務・人事担当者は1人だけ、多くても2人という会社がほとんどです。
売上に直結しない業務となるため、仕方のない面はありますが、経営者の方にぜひお願いしたいのが、人事という業務を軽視しないでいただきたいこと、そして矛盾しますが重視もしすぎないでいただきたいということです。
経営者は、総務・人事担当者1人に任せっきりにしてはいけません。
その理由は2つあります。
1つは、総務・人事担当者の仕事は報われないため、常に経営者が評価しているという姿勢を見せるためです。
総務・人事の仕事というのは賃金、税金、社会保険などお金に関係する仕事、役所との書類のやり取りなど日々行うため、絶対的な正確さが求められます。
要するに、きちんとして当たり前、間違えるなんてとんでもない、ということです。嫌われることは多くても、周りから誉められることがあまりない仕事なわけです。
だからこそ、経営者には、総務・人事担当者が日々正確に業務をこなしているおかげで、会社が安定して運営できているということを理解していただきたいわけです。
想像してみてください。
総務・人事担当者がよく社員の給料を間違える、税金の計算を間違えて翌月に2か月分引かれる、いつまでたっても出張費が振り込まれない、役所の手続きを頻繁に間違うため役所が会社に来て余計な調査を受けたりする場面を。
このようなことが生じて本業に影響が出ないように、総務・人事担当者は日々社員に嫌われながらも正確な業務を行うように頑張っているわけです。
もう1つは、全く逆の面になりますが、総務・人事担当者が会社を牛耳らないようにするためです。
人事の仕事をしていると、社内の人に関するすべての情報を知ることができます。社員の賃金、会社による評価、家族関係、人事の仕事をしていると知りたくない情報まで知ってしまいます。
大きな組織にいたことがある方はわかるかもしれませんが、多くの大企業では、人事部というのは巨大な力を手にしています。情報を握られている社員からすると、人事部というのは怖い存在になりがちです。ある意味、会社のトップよりも怖がられます。
病院・クリニックの理事長は要注意
あくまで私自身の経験ですが、小さな組織でもこのような状態になりやすい業種というのがあります。
それが病院・クリニックです。病院・クリニックのトップは医師がなります。医師が理事長として経営を行いますが、通常総務・人事については事務長など事務部門のトップに任せます。
理事長と事務長が上手に連携すれば良いのですが、理事長が総務・人事を完全に事務長に任せっきりにすると、いつの間にか事務長がすべてを取り仕切る怖い存在になってしまうわけです。
こうなると職員はいつも事務長の顔色をうかがうようなことになりかねません。
当事務所には病院・クリニックの職員さんからのご相談が定期的にありますが、大抵の場合、この状態になっています。そして、その相談のほとんどが事務部門の問題であり、事務長との軋轢、理事長では解決不能という状態に陥っています。
まとめ
今回は人事の仕事という基本的な内容を扱いました。会社組織で人事や管理職を経験したことがある方にとっては当たり前な内容ですが、小さな組織でしか働いたことがない方は、人事を単なるルーティン業務と軽視する傾向があります。
小さな組織であれば、経営者が全体を見渡しすべてを取り仕切るということも可能ですが、規模が大きくなるとそうもいきません。
経営者は、総務・人事の業務について担当者に任せていかざるを得ないのですが、任せっきりにしてはいけないわけです。この当たりのバランス感覚は、経営者や任せる担当者の性格によるところが大きいので、実際にやっていく中で学んでいくしかないのですが、よくある落とし穴というのもあります。
落とし穴に落ちても軽傷ですむものもあれば重傷になるものもあります。専門家の支援を得て総務・人事担当者の育成を行うのも一つの手です。
なお、人事担当者に求められる資質についても書いていますのでこちらもご参考ください。
人事労務の秘訣を紹介するメルマガを購読しませんか?
毎月1回、第1水曜日(次回は2019/3/6に配信予定)に、人事労務に悩む経営者・担当者向けに、公開型のブログなどでは書けない本音を交えた人事労務に関する情報・ノウハウなどの秘訣をお伝えしています。
また、人事労務担当者が対応すべき時期的なトピック、購読者限定のお得な案内も配信していますので、ご関心があれば登録ください。
購読の登録は以下のフォームよりお願いします。購読して不要だと思ったら簡単に解除できます。
たまに「たこ」など明らかにふざけた名前を登録する方がいますが、見つけ次第、削除しています。
記事が参考になったらシェアをお願いします。