こんにちは。福岡の社労士・安部敏志です。
昨今の働き方改革に関する関心の高まりに伴い、就業規則への関心も高まっているようで、就業規則に関するご相談が増えております。
そんな中で増えているのが「正社員、契約社員、パート用に就業規則は分けて作成すべきか?」という質問です。
就業規則は雇用区分に応じて作成すべき
結論から書くと「就業規則は、正社員、契約社員、パート用など雇用区分に応じて作成すべき」と考えています。
実は、恥ずかしながら告白すると、昨年まではどっちでも良いと思っていました。
基本的に多くの会社では正社員用の就業規則を作成・整備し、その中で適用範囲を定め、賃金の手当など、どの労働条件がどの雇用区分に適用されるかを明確にしておけば、1つの就業規則であろうと、分割していようと変わらないので。
この理解自体は今でも間違っているわけではないのですが、問題は就業規則の規定内容に対する合理性が否定されたとき、どの規定が適用されるのかという点です。
このように思うに至った理由は、人事労務に携わっている人なら当然ご存知の昨年の裁判例によるのですが、まさに争いになっているのが、以下の労働契約法第20条です。
- 労働契約法第20条(期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止)
- 有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。
雇用区分の種類
多くの会社で見られる代表的な雇用区分には以下の種類があります。
- 正社員
- 限定正社員
- 契約社員
- 嘱託
- パートタイマー
- アルバイト
重要なことは、各雇用区分をきちんと定義し、どの就業規則がどの雇用区分に適用されるかを明確にしておくということです。
以下の記事で解説していますが、法的にかろうじて定義されているのはパートタイマーのみです。しかし会社によっては、有期契約のパートもいれば、無期契約のパートもいます。
また、契約社員といってもフルタイムの契約社員もいれば、パートの契約社員もいます。
そして、従来の契約社員、パート・アルバイト、嘱託といった雇用区分に加え、無期転換5年ルールによる無期転換社員、勤務地などを限定する限定正社員など、さらに雇用区分が増えている状況にあります。
各雇用区分に応じた就業規則を作成するというのは、作成の手間がかかり、また管理も面倒になるため、ベストとは言えませんが、リスクを減らすという意味ではベターな選択肢になるところです。
そして、それぞれの就業規則を作成・見直す際には、もし処遇の差があるのであれば、職務内容に応じた合理的なものとなっているかを常に意識することが重要です。
ちなみに、当事務所では、各雇用区分に応じた就業規則の規定例について、メール相談サービスの契約者に限定公開し、ご相談に乗っています。就業規則でお困りの際はご検討ください。