労働時間と残業代の関係・岡山の農協で6億円の残業代請求!

こんにちは。福岡の社労士・安部敏志です。

岡山の農協で、正職員の3分の2にあたる200人超が提訴するという異常事態が起こっており、話題になっています。

今回は、この報道内容から、労働時間と残業代の関係について解説をしてみます。

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労働時間と残業代の関係

まずは報道内容を一部抜粋します。

岡山県北部にある、人口約10万人の津山市。静かな地方都市の農協で、多くの職員が未払いの残業代の支払いを求める訴訟を起こす異例の事態になっている。正職員の3分の2にあたる200人超、求める残業代は約3億円にのぼる。

訴えたのは、津山市などを管轄する津山農業協同組合(JAつやま)の職員で、追加分も合わせると221人。未払い残業代に加えて、労働基準法違反があったときに裁判所が支払いを命じる付加金も求めており、請求額全体は6億円近い。提訴は岡山地裁津山支部だが、金額が大きいため岡山地裁本庁で審理することになった。

(略)

原告代理人の則武透弁護士によると、昨春ごろに労組から相談を受け、8月下旬、JA側にタイムカード、賃金台帳の開示を要求したところ、2年分のデータを明らかにした。労組は残業代を計算して支払いを求めたが、応じなかったという。

訴状などによると、2014年11月には、労働基準監督署がJAに対し、残業代を支払うよう是正勧告を出している。JA側は一部の支払いに応じたが、翌15年3月に代理級職員を「管理監督者」に一方的に変更したという。

(略)

今後の裁判では、1.「管理監督者」の範囲、 2.タイムカードの記録が勤務実態と合っているか、3.残業命令があったか――などが争点になるとみられる。

「農協正職員の3分の2が提訴・残業代3億円請求・岡山」朝日新聞2016年6月27日記事

最後にまとめられていますが、争点になるとみられているのは、

  1. 管理監督者の範囲
  2. タイムカードの記録が勤務実態と合っているか
  3. 残業命令があったか

ということです。これを見ると長時間労働と残業代の関係性がわかります。

1. 管理監督者の範囲

管理監督者の範囲については以前から記事を書いていますが、実はかなり範囲は限定されるものです。

実態としては、管理職=管理監督者としている会社が多いのですが、出るところに出られると、これは認められる可能性は低いということを覚悟しておく必要があります。

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2. タイムカードの記録と勤務実態

未払い残業代の総額が約3億円、付加金を含めると6億円近くということですが、これはタイムカードと賃金台帳から算出したものでしょうから、実態とは合っているのでしょう。

タイムカードの記録と勤務実態が異なればかなり悪質ですし。

いずれにしても、労働者名簿、賃金台帳、出勤簿(タイムカード)は法定三帳簿といわれるものなので、それがない、または実態と異なるというのは論外です。

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3. 残業命令

残業(正しくは時間外労働)についてよくある誤解なのですが、まず労働時間そのものについて、経営者側も労働者側も誤解していることが多いです。

労働時間というのは、

労働者が実際に労働に従事している時間だけでなく、労働者の行為が何らかの形で使用者の指揮命令下に置かれているものと評価される時間

と判例で示されています。よく問題になるのは待っている時間をどう取り扱うのかということです。

終業時間が来ても漫然と会社に残っていた、家に帰ってもすることがないから会社に残っていた、自分自身の勉強を会社で行っていた、これは原則的に残業には当たりません。

ただし、そのことを就業規則で明確にしておく必要があります。なぜなら、ただ残っていたとしても、残っているならと仕事の話をすることも現実的にはあるでしょうし、そうすると線引きが難しくなるわけです。

つまり、会社としては明確に指揮命令下に置く、つまり残業命令を行ったときしか残業を認めないと定めておかなければならないということです。ただし、残業代を払いたくないからといって、実際は業務をさせているにも関わらず、残業命令は行わない、というのは許されません。

それは暗黙の命令としてみなされます。ちなみに、日本の多くの企業に存在する「帰りづらい雰囲気」というのは、私は暗黙の命令の一種と考えています。

だからこそ、残業については命令がなければ認めないと就業規則に定めることが必要ですし、現実的な運用でも残業をさせるときはきちんと命令するということが大切になるわけです。

そうしなければ、あくまで報道内容による話ですが、この件のように6億円近くも請求されるわけです。2年前の2014年にもこの問題で行政指導を受けていたようですが、そのときに対処していればこんなことにはならなかったでしょうけど。

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この記事を書いた人


安部敏志

あべ社労士事務所代表・社会保険労務士

国家公務員I種職員として労働基準法・労働安全衛生法等の立案や企業への徹底的な指導に従事した経験を武器に、退職後は逆に会社を守る立場として経営者・人事担当者からの人事労務管理に関するご相談に対応。

最近は記事の執筆やセミナー講師の依頼にも積極的に対応。仕事内容がわかりにくいとよく言われるので、業務内容・実績を紹介するページを作成しました!

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