固定残業代の仕組みとその違法性を法的に解説・求人の9割は違法?

あなたの会社は固定残業代という制度を導入していませんか?

私は、会社として、この固定残業代制度を導入するメリットは全くないと思っていますが、多くの会社ではまだまだ利用されているようなので、今回は、この固定残業代の仕組み、求人の9割は違法性が高いという調査結果、行政の対応について解説します。

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固定残業代とは

まず、この固定残業代とは、そもそも何かということですが、

時間外労働、休日労働、深夜労働の有無にかかわらず、一定時間分の時間外労働等についての割増賃金を定額で支払う制度

ということです。

例えば、基本給25万円(残業代込み)、基本給15万円・残業手当10万円、基本給15万円・営業手当10万円(残業代込み)といった表記が固定残業代に該当します。

この表記の問題点は、何時間の残業時間に該当する金額なのかが不明ということです。それが明らかになっていないのは、労働者にとっても困りますし、後述しますが、実は企業側にとってもリスクとなります。

固定残業代そのものは違法ではない

ただ、念のために申し上げておくと、固定残業代という制度そのものについては違法ではありません。

労働基準法に基づく計算方法による金額以上の割増賃金になっていれば

そのため、毎月の残業手当が5万円と決まって(固定されて)いるから、何時間働いても5万円以上は払わない、というのはアウト、違法です。

逆に、毎月、法定労働時間を超える時間外労働(残業)が発生していて、その残業時間は10時間以内に収まっているので、10時間分の残業手当として、例えば毎月2万円を支払うと就業規則などに規定しておけば問題ありません。

もちろん、10時間を超えたときには、割増分を計算し支給する必要がありますし、裁判例で示されている要件というのは他にもあります。

固定残業代を導入する3つのメリット?

私自身は、この固定残業代という手法のメリットを全く感じていないのですが、社会保険労務士の中ではいまだに「残業代を減らしましょう」などと言って勧めている人が多いようです。

この固定残業代制度を導入するメリットとして思いつくのは以下の3点です。

  1. 求人のときに給料が高いように見せかけることができる(例:毎月の給料30万円(固定残業代含む))
  2. 給与計算の事務負担を軽くすることができる
  3. いくら残業しても固定額しか支払われないと労働者をだますことができる

上の3つについて、法的に見ていくと、1はグレー、2は条件を満たせば適法、3はもちろん違法です。

こうして見ると、やはり固定残業代という制度自体にメリットなんてものはないということがわかります。

そもそも「残業時間を変えずに、残業代を減らしましょう!」と言っている時点で、「違法なことをしましょう!」と言っているに等しいわけです。

固定残業代を導入すると事務負担は軽くなる?

唯一まともなメリットである2の条件を満たすためには、毎月の残業時間が一定時間以内に収まる必要があります。

固定残業代として10時間を設定していて、実際の残業時間が11時間になれば、当然割増分を払わなければ即違法です。

もちろん、残業時間が10時間以内であれば、毎月同じ事務処理でよいということになりますが、そもそも給与計算ソフトfreeeのようなシステムを使っていれば、労働時間からシステムが自動で残業代を計算してくれます。

もちろん合法的に。

つまり、事務処理の効率化のために固定残業代を導入するというのは、紙と電卓で給与を計算していたような時代であればわかりますが、今の時代ではありえないわけです。

そうすると、ただでさえ法令遵守が厳しく叫ばれている今の時代に、まともな会社がわざわざ間違いが起きやすい方法を利用する必要はないわけです。

なお、固定残業代制度を導入したからといって、労働時間の管理が免除されるわけではありません。

労働時間の管理というのは、企業の安全配慮義務として必須とされています。労働時間管理と残業代の問題を混同している人は多いのですが、その解説は今回省略します。

いずれにしても、時間管理は行う必要がありますし、残業時間の変動があれば、その都度残業代は計算しなくてはならないわけです。

こうして改めてみると、やはり固定残業代自体に何のメリットもないですね。

求人の約9割は違法性が高いという調査結果

そして当然ですが、この固定残業代という手法は、現在目を付けられ、調査が行われています。

先程の3つのメリットを見ると、まさにブラック企業の常套手段に思えませんか?

ブラック企業対策プロジェクトの調査結果によると、求人の約9割は違法性の疑いがあるということです。

以下のブラック企業診断書の5項目の中にも、「残業代が固定されている」とありますが、残業代が固定されるためには、労働時間も固定されている必要があるわけです。

black-company-diagnosis

また、行政もこの件については既に内々で対応しています。

平成26年4月に、厚生労働省は、「求人票における固定残業代等の適切な記入の徹底について」という事務連絡を発出し、ハローワークの求人票では「固定残業代」を含む場合には、「時間外手当は時間外労働の有無にかかわらず固定残業代として支給し、○時間を超える時間外労働分は追加で支給」などのように明記することを指示しています。

参考

いわゆる〈固定残業代〉に関するハローワーク求人実態調査

まとめ

いかがでしたでしょうか?

固定残業代というのは、まだまだ多くの会社の人事制度で散見します。幸い、ご相談いただく会社の多くの方は真面目な方ばかりです。

違法なことを意図しているわけではなく、言われるがままに導入したというケースもありました。

今回解説しましたように、固定残業代制度というのは、何らメリットがなく、一歩間違えば違法となってしまうようなリスクを抱える制度です。

それでも、社会保険労務士のサイトを見ると、残業代抑制の手法として堂々と紹介されていますし、民間の求人情報を掲載しているページを見ると必ず出てくるキーワードでもあります。

きちんと人事労務管理を行いたいと思っている企業にとっては、デメリットしかない手法です。

もしかしたら、あなたの会社も専門家の言われるがままに採用しただけかもしれませんが、このような悪印象を持たれる手法は早く止めましょう!

なお、固定残業代については、やはり行政も調査の中で必ず確認する事項になっているようです。

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この記事を書いた人


安部敏志

あべ社労士事務所代表・社会保険労務士

国家公務員I種職員として労働基準法・労働安全衛生法等の立案や企業への徹底的な指導に従事した経験を武器に、退職後は逆に会社を守る立場として経営者・人事担当者からの人事労務管理に関するご相談に対応。

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