【自社だけで対応可能】12月より義務化されるストレスチェック対策を詳細解説-導入編

昨年の労働安全衛生法改正により、今年の12月からストレスチェック制度が開始されますが、あなたの会社は準備ができていますか?

このストレスチェック制度については、社会保険労務士などの人事労務関係の専門家や、メンタルヘルス対策を業種とする方々が、ビジネスチャンスだ!とか、一儲けできる!とざわついているようです。。。

実際、Googleで「ストレスチェック」と検索すると、すごい数の広告が出てきますしw

そこで今回は、危機をあおり、あなたの会社からお金をふんだくろうとする悪徳専門家から身を守るために、「【自社だけで対応可能】12月より義務化されるストレスチェック対策を詳細解説-導入編」と題し、2回に分けて、ストレスチェック制度の内容を詳細に解説します。

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1. ストレスチェックとは?

ストレスチェックというのは、ストレスに関する質問票に労働者が回答・記入し、それを集計・分析することで、労働者のストレスがどのような状態にあるのかを調べる検査です。

昨年6月の労働安全衛生法の改正により、従業員数50人以上の事業場に対して義務づけられた制度で、対象となる事業場は、今年の12月1日よりすべての労働者に対して実施する義務があります。

なお、「すべての労働者」とされていますが、「契約期間が1年未満の労働者や、労働時間が通常の労働者の所定労働時間の4分の3未満の短時間労働者」は義務の対象外となっています。

常時使用する労働者、常時雇用労働者、常用雇用労働者の違いを詳細解説!
今回は、労働法関係でよく出てくる「常時○人以上の労働者」、「常時雇用労働者」、「常用雇用労働者」の違いについて、代表的な労働基準法、労働安全衛生法、障害者雇用促進法、労働者派遣法を用いて解説します。

また、従業員数50人未満の事業場については、当分の間は努力義務とされています。

念のためですが、事業場と企業の違いについて曖昧な方は、以下の記事で解説していますので、ご参考ください。

労働基準法における事業場とは?「事業場」と「企業」はどう違う?
労働基準法に限らず法令を読む際には、必ず言葉の定義を理解しておく必要があります。今回は、労働基準法における「事業場」の定義、「企業」や「部門」との違いを解説します。

さらに、義務と努力義務の違いについても、以下の記事で解説しています。

義務と努力義務の違いとは? 努力だからやらなくてもよいは本当?
法律を読むときには、法律用語を正しく理解しておかなければなりません。間違った理解・運用では下手をすると罰則を受けてしまいます。今回は、義務と努力義務の違いについて法的な観点から解説します。

1-1. ストレスチェック制度の背景と目的

この制度は、過去最多を更新している精神障害の労災請求件数など、増加し続けている労働者のメンタルヘルス不調問題を背景として創設されたものです。

そのため、国は、この制度の主な目的として、労働者自身によるセルフケア及び職場環境改善を通じメンタルヘルス不調の未然防止を図る一次予防であると明示しています。

この目的の部分は、後で解説しますが、かなり重要です!

会社として実務的な対応を行う上でも、絶対に忘れないように注意してください。

1-2. いつまでに何をすれば良いのか?

このストレスチェック制度は、2015年12月1日開始となりますので、1年間、つまり2016年11月30日までの間に、すべての労働者に対して1回目のストレスチェックを実施する必要があります。

この実施というのは、準備から最終的には就業上の措置を含むすべてのフローを含みます。

具体的には以下の図のようになります。

stress-check-flow

1-3. 健康診断との違い

ストレスチェック制度については、まず定期健康診断との関係を理解しておくことが必要です。

定期健康診断というのは、労働安全衛生法第66条に基づく法定の健康診断です。

労働安全衛生第66条(健康診断)
事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断を行なわなければならない。

そして、このストレスチェックは、年1回以上、調査票による実施を基本とすることが求められており、定期健康診断と同時に実施することも可能とされています。

現実的には、定期健康診断もストレスチェックも、産業医が関与することになるでしょうし、効率的な業務処理のために、定期健康診断とストレスチェックを同時に実施する場合が大半になるかと思います。

しかし、ストレスチェックと定期健康診断の法的な違いに注意する必要があります。

それは、ストレスチェックの実施自体は事業場に義務づけられている、しかし、労働者自身にストレスチェックを受ける義務はないということです。

そのため、ストレスチェックを定期健康診断と同時に実施する場合は、ストレスチェックの調査票と一般定期健康診断の問診票を別にするなど、受検者が調査票と問診票のそれぞれの目的や取扱いの違いを認識できる措置が必要になります。

なお、健康診断の受診義務については、以前記事を書きましたのでご参考ください。

健康診断の受診を労働者が拒否するとき会社はどう対応すべき?
今回は、労働者・会社の人事担当者双方からよく聞かれる質問である「法定の健康診断の受診を労働者は拒否できるのか?」という点について解説します。

2. ストレスチェック開始前の準備事項

2-1. 組織内の体制整備・衛生委員会の活用

12月の制度開始前に、会社としてまず行っておかなければならないのが、組織内の体制構築です。

具体的には、

  • 担当者を誰にするのか
  • 組織内での進め方に関する意思決定方法
  • 労働者への周知方法

など、組織としての決定プロセスをどのように行っていくのか検討・決定しておく必要があります。

労働安全衛生法では、常時50人以上の労働者を使用する事業場に対して、衛生委員会の設置、毎月1回以上の開催が義務づけられています。

今回のストレスチェック制度では、この衛生委員会を活用し、以下の12項目を調査・審議した上で、制度の社内の取扱いを内部規程として策定し、労働者にあらかじめ周知することを求めています。

  1. ストレスチェックを実施する目的
  2. ストレスチェックの実施体制(実施者等の明示)
  3. ストレスチェックの実施方法(使用する調査票、評価基準・評価方法を含む)
  4. 個人のストレスチェック結果に基づく集団的な分析の方法
  5. ストレスチェックを個々人が受けたかどうかの情報の取扱い(事業者による把握、受検勧奨を含む)
  6. 個人のストレスチェック結果及び集団的な分析結果の利用方法
  7. 実施事務従事者による個人のストレスチェック結果の保存方法
  8. 個人のストレスチェック結果の事業者への提供内容及び労働者の同意の取得方法
  9. ストレスチェックの実施者又は事業者による個人のストレスチェックに係る情報の開示、訂正、追加又は削除の方法
  10. ストレスチェックに係る情報の取扱いに関する苦情の処理方法
  11. 労働者がストレスチェックを受けないことを選択できること
  12. ストレスチェックに関する労働者に対する不利益取扱いの防止に関すること

この12項目を見ると大変だなと思うかもしれませんが、厚生労働省のリーフレットなどを参照してそのとおりに実行すれば良いだけであり、詳しくは次回の記事で解説します。

それに、この制度では、衛生委員会を活用し審議することを求めているわけですから、外部に任せたとしてもそれは要件を満たしたことにはならないので注意してください!

悪徳専門家は、この点を絶対に説明しません(^0^)

もし、どうしても外部に任せたいのであれば、毎月一回の開催が義務づけられている衛生委員会に参加してもらう必要がありますね。

ちなみに、衛生委員会の中で中心的な役割を担う衛生管理者については、以下の記事で解説しています。

衛生管理者って、食品衛生とは関係ありませんよ!

50人以上の事業場に義務づけられている衛生管理者の役割とは?
衛生管理者という資格はご存じですか?実は国家資格でありながら、食品衛生と勘違いをされることの多いのですが、今回は、50人以上の事業場で全ての業種に選任が義務づけられている衛生管理者について解説します。

2-2. 実施目的の明示

ストレスチェックの実施の目的は、労働者自身によるセルフケア及び職場環境改善を通じメンタルヘルス不調の未然防止を図る一次予防です。

上でも書きましたが、この点はとにかく重要です。

なぜなら、このストレスチェック制度は、制度創設に当たり、日本産業衛生学会をはじめ関係各所で、メンタルヘルス不調者の発見による人事上の不利益な取扱い、産業医の責任問題、企業の安全配慮義務への影響など、様々な懸念が示され議論がなされました。

そのため、企業内で制度を実施する前に、法令の趣旨・目的に沿った対応を行うということを労働者に周知しておくことが大事です。

そうでなければ、精神的に問題のある人間を見つけ排除しようとしているのではないか、といった目的と全く異なる疑いをかけられる可能性もあります。

2-3. 実施者の決定と要件

次に、実施者と実施事務従事者を決める必要があります。

実施者は、医師、保健師のほか一定の研修を受けた看護師、精神保健福祉士であることが求められています。

50人以上の事業場には産業医の選任義務がありますし、事業場の状況を日頃から把握している産業医がストレスチェックの実施者となることが望ましいでしょう。

なお、産業医の職務や選任義務に関する基本事項は以下の記事で解説していますのでご参考ください。

いまさら聞けない産業医の職務と選任義務を基本から解説!
最近はストレスチェックに関するご相談の関係で、産業医について質問されることが多くなってきましたので、今回は50人以上の事業場に義務づけられている産業医について解説します。

また、ストレスチェックの実施そのものを外部機関に業務委託する場合にも、事業場の産業医が共同実施者として密接に連携することが望ましいとされています。

なお、50人未満の事業場の場合は産業医の選任義務がありませんが、ストレスチェック制度を含め、全国47都道府県に設置されている産業保健総合支援センターを活用することはオススメです。

同センターは、厚生労働省が管轄する独立行政法人労働者健康福祉機構が運営するもので、50人未満の事業場は原則無料で利用することができます。

2-4. 実施事務従事者の決定と要件

次に、実際に企業内の担当者となる実施事務従事者の要件ですが、この決定には注意が必要です。

改正労働安全衛生法では、人事上の不利益取扱いにつながることを防ぐため、労働者本人の同意がない限り、個人のストレスチェック結果を事業者に提供してはならないと定めています。

この趣旨を踏まえると、「ストレスチェックの受検者となり得る労働者について、解雇、昇進又は異動等に関して直接の権限を持つ監督的地位にある者」は、ストレスチェックの実施者又は実施事務従事者になれません。

しかし、企業の人員体制等の状況によっては、人事担当の部署の従業員が実施事務従事者にならざるを得ない場合もあります。

その場合も、実施事務従事者は、労働安全衛生法第104条の規定による守秘義務が課されるため、ストレスチェックの実施の事務に携わることで知り得た秘密を所属の上司を含む他者に漏らしてはならないなど、個人情報の厳格な管理が求められますので注意してください。

それに加えて、実施事務従事者の業務は、あくまでも実施者の指示のもとに行い、所属部署の指揮命令を受けて行わないということを労働者に十分に周知することが求められます。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

今回は、【完全無料】自社だけで対応可能なストレスチェック対策を解説-導入編と題して、今年12月から義務づけられるストレスチェック制度の背景・目的、早急に準備すべき事項を解説しました。

次回は、各項目に関する詳細な解説を行っていきます。

なお、厚生労働省は、通常のリーフレット以上に、以下のようにとてもわかりやすいマニュアルをつくって周知を行っています。

stress-check
参考
ストレスチェック導入制度マニュアル
(厚生労働省発行パンフレット)

最近は行政の資料もとてもわかりやすく整理されていますので、あなたの会社に危機感をあおって営業をかけてくる専門家よりも、このマニュアルを読んだ方がよっぽど理解しやすいと思います。

整理していけばシンプルなことを、わざと難しくして売りつけるような悪徳専門家が溢れているということを、今回のストレスチェック制度をきっかけに知ることができましたので、私も注意することにします(^0^)

なお、今回の記事の内容は、硬派な専門誌・企業実務に掲載した記事をアップデートしたものです。改めて感謝申し上げます。

専門誌への寄稿・テーマは今年12月に義務化されるストレスチェック
硬派な専門誌「企業実務」に、今年12月に義務化されるストレスチェックをテーマとして寄稿しました。

また、今回のストレスチェック制度のように、社員が50人を超えると、法規制の義務が急激に増えるなど、人事労務管理の悩みは増えてきます。以下の記事を参考に、準備を始めるようにしましょう。

50人規模の会社に共通する人事労務管理のお悩みとは?
社員数が50人を超えてくると、急激に人材管理・人材育成の必要性に迫られますし、法的な義務も格段に増えてきます。今回は、当事務所にご相談される事案の中から、50人規模の会社に共通する人事労務管理のお悩みをご紹介します。
【自社だけで対応可能】12月より義務化されるストレスチェック対策を詳細解説-導入編
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この記事を書いた人


安部敏志

あべ社労士事務所代表・社会保険労務士

国家公務員I種職員として労働基準法・労働安全衛生法等の立案や企業への徹底的な指導に従事した経験を武器に、退職後は逆に会社を守る立場として経営者・人事担当者からの人事労務管理に関するご相談に対応。

最近は記事の執筆やセミナー講師の依頼にも積極的に対応。仕事内容がわかりにくいとよく言われるので、業務内容・実績を紹介するページを作成しました!

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