有給休暇の取得が義務だった時代があったことを知ってましたか?

こんにちは。先週暖かい沖縄に出張していた福岡の社労士・安部敏志です。

1年ほど前まで沖縄で暮らしていたのですが、12月でも日中はまだ半袖でいられるくらい暖かかったんですね。福岡は寒い・・・

さて、最近ご依頼をうけた就業規則の関係で調べていたところ、年次有給休暇の衝撃的な歴史を知りました。

終戦直後、労働基準法施行後のたった6年間ではありますが、使用者は年次有給休暇を取得させなければならない時代があったんですね!

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有給休暇の取得率

有給休暇の取得率は、以下の記事でも解説していますが、最新の統計によると47.6%と半分以下です。

有給休暇の取得率は47.6%・・・今後義務化される有給消化の影響は・・・
平成27年就労条件総合調査結果に基づく、有給休暇の取得日数・取得率、産業別の取得率、現在国会に提出されている労働基準法改正案に基づく今後の動向についてご紹介します。

有給休暇の取得については、現在、労働者から請求されるという形をとっているので、請求がなければ取得ということにはなりませんし、上司や同僚の顔色をうかがってということになると実際難しいでしょうね。

本来は、以下の記事でも書いているように、時期の請求であって、有給休暇自体の申請・許可ということにはならないのですが、使用者も労働者もこのことについて知らないという方も多いようです。

罰則あり!有給休暇の日数等の基礎知識を完全解説!
労使双方に誤解の多い有給休暇の日数・発生要件等の基礎知識について、法令の内容、判例などを活用し、完全解説します。

有給休暇の取得は義務だった!

では、取得率を上げるために、事前に有給休暇の日を決めておけばよいというのが、今の計画的付与制度の考え方なのですが、この制度もあまり活用されていないようです。

ただ、今回調べ物をしていてたまたま見つけたのが、濱口先生の記事「年次有給休暇は取らせなければいけない時代があった」です。

そういえば、最近、人事の有名人を紹介するといったWeb記事を読んで、一人を除いて見事に誰も知りませんでしたが、人事労務を担当していて濱口先生を知らない、または書籍を読んだことがないというのはかなり恥ずかしいので、ぜひ読んでおきましょうね。

実は、圧倒的に多くの人々に知られていないことですが、終戦後労働基準法が施行されてから6年間の間、労働基準法施行規則にはこういう規定が置かれていたのです。現在とは付与要件が若干異なって、1年勤続で6日付与、1年ごとに1日ずつ増加という仕組みだった時代です。
 
第二十五条 使用者は、法第三十九条の規定による年次有給休暇について、継続一年間の期間満了後直ちに、労働者が請求すべき時期を聴かねばならない。但(ただ)し、使用者は、期間満了前においても、年次有給休暇を与えることができる。
 
年次有給休暇は労働者が請求するものという原則は原則として、しかし労働者が自分から請求してくる前に、使用者の側が積極的に「1年たったぞ。年休が取れるぞ。いつ年休を取るんだ? 早く教えてくれ」と言わなければいけなかったのです。本人がもじもじと言い出しかねている状態をただにやにやと眺めていると、この規定に違反するのです。

今の時代の感覚でこの規定を見ると、すごいと思いませんか?

「継続一年間の期間満了後直ちに、労働者が請求すべき時期を聴かねばならない。」ですからね。

4月1日が有給休暇の基準日になる場合、4月1日以降すぐに管理職などの使用者は部下に対して、有給休暇を取得する予定時期を聞かなければならなかったわけです。

聞いてしまったら、原則としてその時期に休ませないといけないわけですから、かなり取得に向けた強制力が強くなります。間違っても、今のように「パートやアルバイトには有給休暇はない」なんて誤解する人は少なくなる気がします。

労基法39条1項で「与えなければならない」と言いながら、5項で労働者の請求を待っていればいいことになってしまったため、年休取得率がこんなに低い状態になっているわけですが、実は労基法施行当時の発想は、それをさらに規則25条が補完していたのです。「与えなければならない」使用者の義務は、「聴かなければならない」という具体的な義務によって裏打ちされていたのですね。取得しないでそのままになってしまうようなことにならないよう、付与された年休は全て、使用者の側の積極的なアクションによって取得されるようにうまく仕組まれていたわけです。

この趣旨は、労基法施行時の通達(昭和22年9月13日発基17号)でもこう明確に書かれていました。
 
年次有給休暇は使用者が積極的に与える義務があることを強調し、徹底させること。

通達という行政解釈ではありますが、これをもとに行政指導が行われるわけですから、結局企業はその指導に従っていくことになります。

「年次有給休暇は使用者が積極的に与える義務があることを強調し、徹底させる」という表現を見ると、今も昔も意識としてあまり変わっていないんだなと思う次第です。

ちなみに、労基法39条1項で「与えなければならない」というのは以下のことです。

労働基準法第39条(年次有給休暇)第1項
使用者は、その雇入れの日から起算して6か月間継続勤務し全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、継続し、または分割した10労働日の有給休暇を与えなければならない

まとめ

いかがでしたでしょうか?

結構びっくりしませんでしたか? 恥ずかしながらこの記事を見つけるまで私は知りませんでした。

こうして歴史を知った上で、現在審議が止まっていますが、国会に提出されている労働基準法の改正案とのつながりを感じたりして、歴史というのは回るものだと感じる次第です。

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同一労働同一賃金の話も新しい制度だと勘違いしている人も多いわけですし。。。

なお、この記事を見つけたきっかけは、最近ご依頼を受けた就業規則の見直しです。

見直しということでご依頼を受けたのですが、有給休暇の付与日数が年8日になっていて、これって元々いつ作成された就業規則なんだろうと思って調べたところ、今回ご紹介した記事にたどり着いたわけです。

見直しじゃなくて、ほぼ全面改正の就業規則になるかと・・・

濱口先生の本や記事を読むと、いつもビスマルクの以下の言葉を思い出します。

愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ

女性活躍推進が最近のキーワードですが、濱口先生の以下の本は人事担当者であれば必読です。

今は働き改革の名の下に、人事制度を見直す動きが活発ですが、歴史的な流れを知っておいた上で発言・実行しないと恥ずかしいことになりますよ。

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この記事を書いた人


安部敏志

あべ社労士事務所代表・社会保険労務士

国家公務員I種職員として労働基準法・労働安全衛生法等の立案や企業への徹底的な指導に従事した経験を武器に、退職後は逆に会社を守る立場として経営者・人事担当者からの人事労務管理に関するご相談に対応。

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