約74%が違反!過労に関する行政の重点監督結果の具体例を解説!

こんにちは。福岡の社会保険労務士・安部敏志です。

厚生労働省が「過重労働解消キャンペーン」の重点監督(企業への立入調査)の実施結果を発表しましたので、今回はその内容を取り上げます。

このキャンペーンは、長時間の過重労働による過労死に関する労災請求のあった事業場や、若者の「使い捨て」が疑われる事業場など、労働基準関係法令の違反が疑われる事業場に対して集中的に実施されたもので、5,031事業場のうち、3,718事業場、全体の73.9%で法令違反があったというものです。

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1. 違法な時間外労働

こういった発表で注目して見るべき点は、何が法令違反なのか、具体的にはどのような指摘を受けているのかということです。

違法な時間外労働として是正勧告を受けているのが2,311事業場、対象の45.9%で、後述する2つの法令違反よりも断然多くなっています。

ちなみに是正勧告を受けると、一定の期限内に是正したという報告を提出する必要があります。

このうち、時間外労働の実態として最も長い労働者の時間数が、

  • 月100時間を超えるもの:799事業場(34.6%)
  • 月150時間を超えるもの:153事業場(6.6%)
  • 月200時間を超えるもの:38事業場(1.6%)

となっています。

違反内容の詳細については代表的な事例が掲載されておりこの中から抜粋します。

こうしてみると、36協定関係の指摘が多いのですが、そもそも時間外労働を行うためには労使協定である36協定が必要であることからこれは当然です。

にも関わらず、その当然なことをできていないということです。また、労働者の過半数代表者の選出手続きや特別条項の回数なども指摘を受けており、労働時間管理のずさんな実態が見えてきます。

  • 会社は、労働時間管理を全く行っておらず、半数以上の労働者について、月100時間を超える時間外労働を36協定(労使協定)の締結・届出なく行わせている
  • 36協定の協定当事者である労働者の過半数代表者を一部の労働者から選出し、適正な選出手続きを行っていない
  • 36協定の特別条項で定めた回数(年6回)・上限時間(月100時間)を超えて、違法な時間外労働を行わせている(ほとんどの労働者が年11回)
  • 休憩時間を一律に30分単位で切り上げて扱い法定の休憩時間を与えていない
  • 高校生アルバイト(年少者)に対して、時間外・休日労働を行わせてはならないにもかかわらず、月約100時間の時間外労働を行わせている
  • 賃金台帳に時間外労働時間数を記入していない

2. 賃金不払残業

賃金不払残業として是正勧告を受けているのが、509事業場、対象の10.1%です。

これは特に説明の必要がないほどわかりやすいと思いますが、要するに残業させたのにその分の割増賃金を払っていないということです。

ただ、具体的な事例を見ていく中で、注意を要するのは以下の点です。

  • 学生アルバイトについて、担当する授業の時間帯のみを労働時間として取り扱い、授業の準備や会議の時間に対する割増賃金を支払っていない
  • 始業・終業時刻を労働者自身にパソコンに記録させて労働時間管理を行っていたが、正社員には割増賃金を全く支払わず、アルバイトに対しては、交代を待つ手待ち時間を労働時間ではないとして、月に10時間程度少ない時間数で賃金を計算し、割増賃金を適正に支払っていない
  • 月25時間分の時間外労働時間に係る割増賃金を支払うこととしていたものの、実際の時間外労働時間数が月25時間を超えた場合に、不足額を支払っていない

時間外労働について割増賃金を支払わなければならないというのは、普通の方であればご存じかと思いますが、この指摘を見ると、そもそも、どの部分が労働時間に当たるのかといった点まで踏み込んで違反を指摘されているということです。

3つ目は固定残業制度の典型例で、これは誤解ではなく確信犯でしょうけど。。。

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3. 過重労働による健康障害防止措置が未実施

これが一般の方には最もわかりにくいと思います。

簡単にいうと、時間外労働があるとしても労働者の健康管理はきちんとしましょうということです。

過重労働による健康障害防止措置が未実施であるとして是正勧告を受けているのが675事業場、対象の13.4%です。

具体的な事例の方がわかりやすいと思いますので、代表的な法違反内容を抜粋します。

  • アルバイトに対して定期健康診断を実施していない
  • 深夜業に従事する労働者に対する特殊健康診断を実施していない
  • 定期健康診断の結果、有所見者に対して、医師等による意見聴取を行っていない
  • 定期健康診断の結果について、個人票を作成していない
  • 衛生委員会の中で、長時間労働による健康障害防止対策について調査審議していない
  • 衛生管理者や産業医を選任しておらず、衛生委員会を設けていない
  • 衛生委員会の構成員として、労働者を代表する者を参加させてない

あくまで代表的な事例ということではありますが、こうしてみると、労働安全衛生の基本である健康診断の未実施・不適切な実施、労働安全衛生管理体制として50名以上の事業場に求められる衛生管理者や産業医などの未選任、衛生委員会の活動内容など、当たり前のことを行っていないということです。

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参考

過重労働による健康障害防止のための総合対策(平成18年3月17日付け基発第0317008号)

その他の違反事例・労働条件通知書

また、その他の違反事例として、以前このサイトでも取り上げましたが、

  • 繁忙期である夏季に多くの学生アルバイト(主に高校生)を採用しているが、労働契約の締結に当たり、労働条件を書面で明示していない

という是正勧告も事例としてありました。

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まとめ

いかがでしたでしょうか?

労働基準法なんて守ってられない、労働関係の法律は難しいという方がいますが、具体的な違反事項を見てみると、案外、基本的な部分で違反の指摘を受けている事業場が多いということです。

最近は、信頼している方からのクチコミばかりで対応することが多くなってきたので、おかげさまで変な経営者の相手をしなくてすむようになったのですが、以前、「売上が全然上がらないのに、労務管理なんてできるわけがない、まずはヒトよりカネだ、そもそも会社がつぶれたら社員が困るだろ」とアホな議論をふっかけられたことがあります。

私自身もそうですが、起業・独立したばかりの頃というのは、確かに売上が最優先であり、顧客を見つけなければ事業は継続できません。食べていかないといけないですしね(^0^)

ただ、顧客を見つける、売上を上げるというのは、経営を行う上での最低限のことであり、それができないなら、そもそも人を雇わず、一人ですれば良いわけです。

「能力がないけど頑張っているし、そもそもルールが細かすぎるから守れるはずない。まずはプロとしてファンのためにも続けていくことが大事だ」ってプロのスポーツ選手が言いますか?

それを聞いた人は「ルールを守られないなら早く辞めろ、頑張っているとか関係ないし、そもそもプロになったことが間違いじゃないの?」ときっと言うでしょう。

ということで、今後、私に相談をされる方は、ルールは守りたい、その中で具体的な方法、効率的な手順を知りたい、といった内容でお願いします。

くれぐれも、こんなアホな議論をふっかけるのは止めてください(^0^)

それに、アホな経営者を信じてついていってる社員の方々が気の毒すぎますし。

なお、発表文の中では、「厚生労働省では今後も、月100時間を超える残業が行われている事業場などに対する監督指導の徹底をはじめ、過重労働の解消に向けた取組を積極的に行っていきます。」とあり、残業が恒常化している企業は業務改善の対応が必要でしょう。

行政の調査?どーんと来い!という姿勢でも別に構いませんが、そもそもその対応に社員の時間を取られるのは時間のムダですよね?

そんな時間があるなら営業に行って売上を上げる方が断然良いわけですし。

参考

平成27年度「過重労働解消キャンペーン」の重点監督の実施結果を公表
~重点監督を実施した事業場の約半数にあたる2,311事業場で違法な残業を摘発~

約74%が違反!過労に関する行政の重点監督結果の具体例を解説!
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この記事を書いた人


安部敏志

あべ社労士事務所代表・社会保険労務士

国家公務員I種職員として労働基準法・労働安全衛生法等の立案や企業への徹底的な指導に従事した経験を武器に、退職後は逆に会社を守る立場として経営者・人事担当者からの人事労務管理に関するご相談に対応。

最近は記事の執筆やセミナー講師の依頼にも積極的に対応。仕事内容がわかりにくいとよく言われるので、業務内容・実績を紹介するページを作成しました!

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