パワハラの定義を見極める2つのポイントと具体例(図解あり)

こんにちは。福岡の社労士・安部敏志です。

最近はハラスメント関連のご相談が増えており、その中でもパワハラに関する相談は多くなっています。

そこで今回は、パワハラの定義、パワハラに該当するかチェックする上で重要な6種類の行為と具体例について解説します。

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パワハラの定義

まず、よく聞かれるのですが、パワハラに関する明確な法的な定義というのは存在しません。

しかし、厚生労働省は、パワハラに関する情報サイト「あかるい職場応援団」を設置し、その中で、職場のパワーハラスメントとして、以下の定義を示しています。

職場のパワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為

なお、セクシュアルハラスメント(いわゆるセクハラ)についてはすでに法律によって定義が規定されていますが、後述するようにパワハラの相談件数は近年1位、割合としては大きく上昇している状況であるため、いずれセクハラと同様に法制化される可能性が高いと言えます。

それでは本題であるパワハラの定義に戻りますが、パワハラの定義を理解するポイントは以下の2つです。

職場内の優位性
パワーハラスメントという言葉は、上司から部下へのいじめ・嫌がらせをさして使われる場合が多いが、先輩・後輩間や同僚間、さらには部下から上司に対して行われるものもある。「職場内での優位性」には、「職務上の地位」に限らず、人間関係や専門知識、経験などの様々な優位性が含まれる。

上司から部下に対するパワハラというのが一般的ですが、パワハラの定義では、それだけに限らず、先輩・後輩間、同僚間、そして部下から上司に対するものも含まれます。

また、人間関係、専門知識、経験にもより、簡単に言えば、当事者間の力関係によるものということです。

業務の適正な範囲
業務上の必要な指示や注意・指導を不満に感じたりする場合でも、業務上の適正な範囲で行われている場合には、パワーハラスメントにはあたらない。

パワハラかどうかを判断する際に、最も悩ましいのはこの業務の適正な範囲に当たるのかどうかという点でしょう。

上司は、自らの職位・職能に応じて権限を発揮し、業務上の指揮監督や教育指導を行い、上司としての役割を遂行することが求められます。

では、何が業務の適正な範囲で、何がそうでないのか、その範囲を明確にすることが会社に求められ、会社として上司の適正な指導をサポートする必要があるということです。

この会社によるサポートがなければ、パワハラに対する意識が高まっている今、1人ひとりの上司が部下への指導を躊躇してしまうことになりかねず、結果として、会社内の人材育成にも負の影響を与えてしまうことになりかねません。

パワハラに該当する6種類とその事例

それでは、厚生労働省の有識者会議による報告書で示されたパワハラに該当する6種類とその典型的な事例をご紹介します。

間違いなくパワハラだろうと言える事例もあれば、これもパワハラに該当するのか・・・と驚く事例もあるかもしれませんが、これは報告書の中で取りまとめられたものですのでご注意ください。

1. 身体的な攻撃

パワハラの6つの種類

叩く、殴る、蹴るなどの暴行をしたり、丸めたポスターで頭を叩くことなどは、身体的な攻撃として、パワハラに該当します。

報告書では以下の事例が示されています。

  • 足で蹴られる(女性、50歳以上)
  • 胸ぐらを掴む、髪を引っ張る、火の着いたタバコを投げる(男性、40歳代)

2. 精神的な攻撃

パワハラの6つの種類

同僚の目の前で叱責する、他の職員を宛先に含めてメールで罵倒する、必要以上に長時間にわたり、繰り返し執拗に叱ることなどは、精神的な攻撃として、パワハラに該当します。

報告書では以下の事例が示されています。

  • みんなの前で、大声で叱責。物をなげつけられる。ミスをみんなの前で、大声で言われる(女性、30歳代)
  • 人格を否定されるようなことを言われる。お前が辞めれば、改善効果が300万出るなど会議上で言われた(男性、20歳代)

3. 人間関係からの切り離し

パワハラの6つの種類

1人だけ別室に席をうつす、強制的に自宅待機を命じる、送別会に出席させないことなどは、人間関係からの切り離しとして、パワハラに該当します。

報告書では以下の事例が示されています。

  • 挨拶をしても無視され、会話をしてくれなくなった(女性、30歳代)
  • 他の人に「私の手伝いをするな」と言われた(男性、50歳以上)

4. 過大な要求

パワハラの6つの種類

新人で仕事のやり方もわからないのに、他の人の仕事まで押しつけ、同僚は皆、先に帰ってしまうような場合は、過大な要求として、パワハラに該当します。

報告書では以下の事例が示されています。

  • 終業間際に過大な仕事を毎回押し付ける(女性、40歳代)
  • 休日出勤しても終わらない業務の強要(男性、30歳代)

5. 過小な要求

パワハラの6つの種類

過大な要求とは反対に、運転手なのに営業所の草むしりだけを命じる、事務職なのに倉庫業務だけを命じる場合は、過小な要求として、パワハラに該当します。

報告書では以下の事例が示されています。

  • 従業員全員に聞こえるように程度の低い仕事を名指しで命じられた。(女性、20歳代)
  • 営業なのに買い物、倉庫整理などを必要以上に強要される(男性、40歳代)

6. 個の侵害

パワハラの6つの種類

交際相手について執拗に質問したり、配偶者に対する悪口を言ったりすることは、私的なことに過度に立ち入ることになり、個の侵害として、パワハラに該当します。

報告書では以下の事例が示されています。

  • 交際相手の有無について聞かれ、過度に結婚を推奨された(女性、30歳代)
  • 個人の宗教を、みんなの前で言われ、否定、悪口を言われた(女性、50歳以上)

パワハラの相談は上昇を続けている

ここまでパワハラの定義、パワハラに該当する6種類とその事例を見てきましたが、パワハラをどこか他人事にとらえていませんか?

行政が設置した相談コーナーに寄せられる相談内容では、実は解雇などの労働条件よりも、このパワハラが圧倒的に多い状況です。

以下のグラフは、「あかるい職場応援団」のデータで見るパワハラから作成したものですが、全体の相談件数が横ばいの中で、パワハラに関する相談が増え続け、割合は3割弱になっている状況です。

また、厚生労働省が平成29年4月に発表した調査では、従業員の約3人に1人が「過去3年間にパワーハラスメントを受けたことがある」と回答していますし、実際、パワハラという問題は会社が気づきにくいものです。

近年パワハラの問題は増加傾向にあり、なぜ会社がその実態に気づかないのか、イメージではなく、調査結果をもとに解説していますのでご参考ください。

パワハラの相談件数は6万件超! それでも会社が気づかない理由
3人に1人がパワハラを受けた経験があると回答しています。会社として早急に取り組まなければならない理由を解説します。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

パワハラの定義でご紹介したように、実務的には、業務適正な範囲かどうかを悩む、その線引きをどこまで行うかというケースは多いかと思います。

日頃からしゃべり方は詰問調だけど、実は思いやりがある上司や先輩なども確かにいます。

ただ、海外で働いたり、外国人と仕事をしたりした私の経験だけではありますが、日本人はハラスメントに関する意識がとても低いと考えています。

未だに、体罰に教育的効果があるかどうかで議論になったりもしますし。。。

なお、今回ご紹介した6つの種類についても、パワハラの全てを網羅したものではなく、6つの種類以外でもパワハラになりえるという点には注意が必要です。

パワハラの定義の再掲になりますが、最後の部分「職場環境を悪化させる行為」というのは、パワハラに限らず、職場のハラスメントすべてに共通する部分です。

職場のパワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為

職場環境を悪化させる行為を放置せず、許さないという姿勢を常に示し続けることが重要です。

なお、厚生労働省の情報サイトでは、パワハラ診断チェックリストを公開していますので、こちらを活用して、まずは社内アンケートを行うのも実態把握のためによいのではないでしょうか。

参考 あかるい職場応援団:パワハラ診断 チェックしてみよう!

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この記事を書いた人


安部敏志

あべ社労士事務所代表・社会保険労務士

従来の顧問契約とは異なり、中小企業の人事労務担当者の育成を主要業務とする。専門記事の執筆やセミナー・社内研修の講師にも対応。

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