エイベックス社長のブログ「時代に合わない労基法なんて早く改正してほしい」に感じた違和感

こんにちは。福岡の社労士・安部敏志です。

先日、毎日新聞に「労基署が勧告 違法な長時間労働で」という記事が出ましたが、その後以下の記事を見て、久しぶりに「まだこんな発想の経営者がいるのか」と思い、その中身に驚いてしまったので取り上げます。

参考

エイベックス松浦氏が労基署の是正勧告を受けコメント「時代に合わない労基法なんて早く改正してほしい」(BLOGOS)

スポンサーリンク

自らの職場環境の改善ではなく、法律改正を要求?

「時代に合わない労基法なんて早く改正してほしい」・・・たまに聞くフレーズですが、労働基準法というのは最低基準を定めた強行法規です。

時代に合う・合わないではなく、最低基準くらい守りなさいという話なわけです。「労働基準法なんて守れない」という経営者はいますが、それは守り方を知らないか、そもそも守るつもりがないだけです。

で、今回の件では、あくまで報道レベルではあるものの、是正勧告の内容として「実労働時間を管理していない」という人事労務の基本すらできていない会社の社長として、よく言えたものなわけです。。。ただ、公平を期すると「先日労働基準監督署から是正勧告を受けた。このことに対しては現時点の決まりだからもちろん真摯に受け止め対応はしている。」とも書いているので、現時点の決まりには従うということです。

で、次に思ったのが、「これはたかの友梨以来だな・・・」と。

約2年前の2014年に「労働基準法にぴったりそぐったら絶対成り立たない」「つぶれるよ、うち。それで、みんな困らない? この状況でこれだけ働けているのに、会社つぶしてもいいの?」と豪語していたけど、結局告発され、世間に糾弾され、最後は謝罪・和解した会社ですね。

結果的に、労働基準法や就業規則よりも効力の強い労働協約まで結んでいますので、今の職場環境はきっと良くなっているでしょう。

まだ経営は続いているようなので、労働基準法以上の対応が求められる労働協約に沿っても、つぶれなかったみたいですね。

とまあ、上の記事を読んだ所感は以上ですが、実際に以下の社長のブログ記事を読んでみることにしました。やはり報道だけでなく、きちんと原文を読んだ上で判断すべきですからね。

参考

労働基準法 是正勧告とは

一見筋が通っている? でも根本的に間違っており時代の流れも見えていない

記事全体を読んだ感想としては、実際に、このように心の中で思っている経営者はたくさんいるだろうなということ。

ただ、時代の流れを感じて、少なくとも、声に出して言わない・発信しないというのが経営者のセンスであり、リスク管理上も重要です。

「思うのは自由ですが、そんな発言はしないでください」と私自身も経営者を諫めたこともあり「今度来た社労士はうるせーな」と言われつつも、「確かにまずいな・・・」と理解はしてもらえました。

で、エイベックスの社長が、根本的に何が間違っているのかというと、雇用という考え方、労働基準法という強行法規の捉え方です。

「24時間仕事バカ!」というテーマの連載がある。
「仕事が遊びで、遊びが仕事」というブログがある。

こういう人たちもこれからは自分が好きで働いていても法律で決められた時間しか働けなくなる可能性があるようだ。

いやいや、雇用しなければいいわけですよ。

経営者や個人事業主には労働法の適用はないので、好きなことなら1日24時間、1年365日でも働く(というより文脈上遊ぶになるのか・・・)ことができます。外注という方法もあります。

そして、特に個人的に許せなかった部分は以下の文章。

それぞれの業界にはそれぞれ特殊な事情がある。(略)病院で働いている人は労働時間と治療とどちらを優先するべきか。

当事務所のクライアントとして病院もあるのですが、最低基準である労働基準法を守るというのは大前提であり、だからこそ法令に沿って、1か月単位の変形労働時間制などの制度を用いて、また有給休暇の日数の配慮をしながら、毎月シフトを組み立てています。

「労働時間と治療のどちらを優先するのか」などというアホなことを考えているわけがなく、どちらも優先するために経営層は財務面も考えながら人員や勤務調整をしているわけです。

病院というのは様々な国家資格を有するプロフェッショナルな集まりであり、医師だけで出来ることは限られています。だからこそ、チーム医療として様々な職員の生活環境なども配慮しながらシフトを組んでいます。

はっきりいって、シフトを組むだけで一苦労です。忙しい時期になるとシフトを変更せざるを得ません。シフトを一旦組んでしまって変更する場合は職員の同意も必要になります。

ただ、病院というのは地域にとって必要な機関であり、だからこそ必要な機関を維持していくために、働く人のことを真剣に考え、健康を守りつつ長く働いてもらわなければならないと頑張っているわけです。

そんな病院だからこそ、当事務所も頻繁に人事労務に関する相談を受けますが、こちらも真剣に支援をしています。(あくまで報道レベルではあるものの)実労働時間管理すらやっていなかった会社に、さも同じ立ち位置にいるような言動をして欲しくないわけです。

でも労働基準監督署は昔の法律のまま、今の働き方を無視する様な取り締まりを行っていると言わざるを得ない。例えば去年9ヶ月間で労働基準監督署が監督指導をした事業場8,500のうち法令違反があると指摘された事業場はどのくらいあるか分かるだろうか。その数は6,500事業場にも及んで、75%以上が何かしらの違反とみなされている状況。そもそも法律が現状と全く合っていないのではないか。

これも発想として逆でしょう。

労働基準法というのは最低基準を定めた強行法規です。最低基準くらい守りなさいよという話なわけです。違反項目を見ていくとあまりにも基本的な違反ばかりを指摘されているのできっと驚くでしょう。

まあ、実労働時間管理すらしていないというのが事実だとしたら、驚かないかもしれませんが。。。

で、これまたよく言う人がいるのが「日本の労働法令は厳しい」ということなのですが、それは解雇の話であり、労働時間については日本はむしろ海外に比べて甘々です。

ちなみに、以下の記事で書きましたが、労働基準法といった強行法規に違反するのは海外では人権侵害とみなされます。

労働基準法を軽視=人権侵害の企業は海外では常識ですよ!
労働基準法というのは、働く人の権利を守るための法律です。労務コンプライアンスの重要性への認識が、日本と海外では大きく異なります。今回は、労働法と人権、リスクマネジメントについて解説します。

また、記事を読んでいて、一貫しているのは労働基準法が時代の流れを組んでいない、改正案も棚ざらしになっているではないか、ということなのですが、それはその通りです。

ただ、時代の流れは、36協定の罰則化であり、労働時間の規制強化です。

なので、労働基準法が時代の流れを組んでいないという社長の理解は正しいのですが、社長の理解する時代の流れと、今起こっている時代の流れは180度違うわけです。今回の電通事件が起きてから、多くの会社で起こっているのは「労働時間の適正な管理」なんですよね・・・

ただ、一点同情せざるを得ない点は以下の部分です。それだけ世間から注目されている会社なのかもしれません。

さらに言いたいのはこれだけの割合で何かしらの違反があると指摘される中で、是正勧告を受けたほぼ全ての企業の名前を世の中の人が知ることはないけど、ごく一部の目立つ企業だけは何故か見せしめのような報道をされること。それも突然なんの前触れもなく。是正勧告を受けた企業は公表をされていないにも関わらず、僕らは是正勧告を受けた直後に報道された。

ちなみに、記事の最後にある以下の文章には違和感を感じました。

現在の労働基準法改正案で、高度プロフェッショナル制度はともかく、裁量労働制の範囲に関する話など、普通の経営者は知りません。

知識が乏しいどころか、よくご存知と思います。だからこそ、記事の中で語られている内容に違和感があります。都合の良い部分だけは博識で、都合の悪い部分は知識が乏しい? もしかしたら複数の人でこの記事を書いたのかな???

いずれにしても、法改正の心配の話をしたり、業界と国の未来のために戦ったりするよりも、まずは自社の職場環境の整備と改善を行っていただきたいと思います。

僕の法律知識なんて乏しいから間違っていることを書いているかもしれない。しかし、納得できないことに納得するつもりはない。
戦うべき時は相手が誰であろうと僕らは戦う。それが僕らの業界とこの国の未来のためだと思うからだ。

エイベックス社長のブログ「時代に合わない労基法なんて早く改正してほしい」に感じた違和感
本記事以外の人事労務情報も満載の
Facebookページを、
いいねしてチェックしよう!
スポンサーリンク

フォローする

人事の秘訣を知りたくありませんか?

人事の秘訣を知りたくありませんか?

毎月1回、人事に悩む経営者や人事担当者向けに、公開型のブログでは書けない本音を交えた人事の秘訣をお伝えしています。

また、人事担当者が対応すべき時期的なトピック、購読者限定のお得なサービスのご案内などを配信していますので、ぜひお気軽にご登録ください。

注意
*は必須項目を示しています。なお、氏名の欄には本名を漢字で入れてください。「たこ」など明らかにふざけた名前を登録している方がいますが、見つけ次第削除しています。


この記事を書いた人


安部敏志

あべ社労士事務所代表・社会保険労務士

中小企業の人事労務担当者の育成を中心に活動。その他、労働法令に関する専門記事の執筆やセミナー・社内研修の講師にも対応。詳しくは業務内容のページをご参照。

error: Content is protected !!